FDAが進行した乳癌に新たな治療薬を承認/FDAニュース
FOR IMMEDIATE RELEASE:2013年2月22日
Media Inquiries: Stephanie Yao, 301-796-0394
Consumer Inquiries: 888-INFO-FDA
FDAが進行した乳癌に新たな治療薬を承認
米国食品医薬品局(FDA)は2013年2月22日、HER2陽性が認められる進行(転移)乳癌患者を対象とした新規薬剤であるKadcyla(抗体薬物複合体トラスツズマブエムタンシン)を承認した。
HER2は正常細胞の増殖に関与するタンパク質である。HER2は、ある種の乳癌を含め、数種類の癌細胞で発現量の増大が認められる(HER2陽性)。HER2陽性乳癌では、HER2タンパク質の発現量が増大し、癌細胞の増殖および生存の原因となっている。
Kadcylaは、別の抗HER2療法剤であるトラスツズマブ、および乳癌の治療で頻繁に用いられる化学療法剤のタキサン系薬剤による前治療歴のある患者を対象として投与される。
「Kadcylaは、癌細胞増殖を阻害するDM1と呼ばれる薬剤をトラスツズマブと結合させた薬剤です」と述べたのはFDA医薬品評価研究センター・血液腫瘍製品室長のRichard Pazdur医師である。「Kadcylaは薬剤を癌の病巣に送り届け、腫瘍の退縮および乳癌の進行の遅延、さらに生存期間の延長をもたらします。HER2タンパク質を標的として承認された薬剤では4番目の薬剤です」。
臨床試験中は試験薬コードT-DM1であったKadcylaは、FDAの迅速審査プログラムで薬剤承認申請による審査を受けた。このプログラムは、安全で有効な治療法と考えられる薬剤に適用される6カ月間の迅速審査であり、有効な他の治療法が存在しない場合、又は市販製剤と比較して有意な改善をもたらす場合に行われるものである。この他にFDAが承認したHER2陽性乳癌治療薬にはトラスツズマブ(1998年)、ラパチニブ(2007年)およびペルツズマブ(2012年)がある。
Kadcylaの安全性および有効性については、患者991人をKadcyla群又はラパチニブと他の化学療法剤であるカペシタビンとの併用群のいずれかに無作為に割り付けた臨床試験において評価された。患者への治療は、病状進行又は耐え難い副作用の発現まで継続された。本試験は、癌の進行が見られず患者が生存した期間である無進行生存期間、および患者が死亡するまでの生存期間である全生存期間を評価する設計であった。
試験成績から、Kadcyla群患者では無進行生存期間の中央値は9.6カ月であり、これに対してラパチニブ+カペシタビン群患者では6.4カ月であった。全生存期間の中央値はKadcyla群では30.9カ月であり、これに対してラパチニブ+カペシタビン群では25.1カ月であった。
Kadcylaは、添付文書に患者および医療従事者に対する次の警告欄が記載された上で承認されている:本剤により肝毒性、心毒性の発現、および死亡に至ることがある。本剤はまた重篤な生命を脅かす恐れのある先天性疾患を引き起こすことがあり、そのため本剤投与前に妊娠状態の確認の必要がある。
Kadcylaを投与した患者で報告されている主な副作用には、嘔吐、疲労感、筋肉痛又は関節痛、血小板濃度の低下(血小板減少症)、肝酵素値の上昇、頭痛および便秘などがある。
乳癌は、女性の癌関連の死亡原因では第2位となっている。米国国立癌研究所によれば、2013年の推定値として、232,340人の女性が乳癌と診断され、また39,620人が乳癌により死亡するとされている。また20%近くの乳癌でHER2タンパク質の発現量の増大が認められる。
Kadcyla、トラスツズマブおよびペルツズマブは、カリフォルニア州サウス・サンフランシスコを拠点とするRocheグループ傘下のGenentech社が販売している。またラパチニブはノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パークを拠点とするグラクソ・スミスクライン社が販売している。
詳しい情報については以下を参照のこと:
FDA: Office of Hematology and Oncology Products (血液腫瘍製品室)〔原文〕
FDA: Approved Drugs: Questions and Answers (承認薬:質問と回答)〔原文〕
FDA: Drug Innovation (薬剤における革新)〔原文〕
NCI: Breast Cancer (乳癌)〔原文〕
******
菅原宣志 訳
原 文堅(乳癌/四国がんセンター)監修
******
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
乳がんに関連する記事
欧州臨床腫瘍学会(ESMOアジア2024)ハイライト
2024年12月20日
喫煙はいかにして乳がん放射線治療を複雑にするのか
2024年12月16日
放射線治療は、放射線(通常はX線)を用いてがん細胞のDNAを損傷させ、がん細胞を破壊...
がんにおけるエストロゲンの知られざる役割ー主要な免疫細胞を阻害
2024年12月2日
乳がん個別化試験で、免疫陽性サブタイプにDato-DXd+イミフィンジが効果改善
2024年12月3日