2012/10/02号◆FDA情報「FDAが高密度乳腺組織のための超音波画像診断システムを承認」「進行した大腸癌の新たな治療薬を承認」
NCI Cancer Bulletin2012年10月2日号(Volume 9 / Number 19)
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◇◆◇ FDA情報 ◇◆◇
・FDAが高密度乳腺組織のための超音波画像診断システムを承認
・進行した大腸癌の新たな治療薬を承認
FDAが高密度乳腺組織の超音波画像診断システムを承認
米国食品医薬品局(FDA)はこの度、高密度乳腺組織の女性において標準的なマンモグラフィと併用する初の超音波装置、somo-v Automated Breast Ultrasound System(ABUS)を承認した。
somo-v ABUSは乳癌の症状がなく、マンモグラフィで癌が検知されておらず、手術や生検など超音波画像上で乳房の外観を変化させる処置を受けていない女性に使用可能となる。
高密度乳腺は、脂肪組織量が多い低密度乳腺と比較して、結合組織と乳腺組織の量が多い。乳腺密度の高い女性はマンモグラフィ検診受診者の約 40%に上ると推定される。この女性は乳癌を発症するリスクが高く、発見されたときには癌が進行していて、治療が難しいことが多い。
結合組織と乳腺組織はほとんどの腫瘍と同様に白い領域に見えるため、乳腺密度の高い乳房のマンモグラフィ画像は読影が難しい。そのため、高密度の乳腺組織では小さい腫瘍が不明瞭になり、乳癌の発見が遅れる可能性がある。
somo-v ABUSは高周波の音波を乳房に直接あて、読影用に約1分間で乳房全体の画像を複数記録する。このシステムのソフトウェアは、評価のために乳腺組織の三次元画像を生成する。
乳腺密度が高くマンモグラフィの結果が陰性だった200人の女性について、放射線認定医がマンモグラフィ画像のみ、あるいはマンモグラフィ画像とsomo-v ABUS画像との併用で読影した臨床試験に一部基づいて、FDAはこれを承認した。somo-v ABUSで検出された腫瘤には、癌であるかどうか判定するために生検を実施した。その結果、マンモグラフィ画像とABUS画像を併用した場合、マンモグラフィ画像のみの場合と比べて乳癌の検出率が統計的に有意に上昇することが示された。
FDAは承認の条件として、ABUSを使用するための訓練を医師と検査技師に対して実施すること、品質管理基準を明確に規定したマニュアルを提出することをメーカーに要求している。
進行した大腸癌の新たな治療薬を承認
FDAは、治療後に進行、転移した大腸癌患者の治療に薬剤regorafenib(レゴラフェニブ:Stivarga)を承認した。 レゴラフェニブは癌細胞増殖を促進する数種類の酵素を阻害する。
レゴラフェニブの安全性と有効性は、治療歴のある転移性大腸癌患者760人を対象とした単一の臨床試験で評価した。生存期間の中央値は、レゴラフェニブと支持療法(BSC)とを併用した患者では6.4カ月であるのに対し、プラセボとBSCとを併用した患者では5カ月であった。また、無増悪生存期間(PFS)中央値は、プラセボ群の1.7カ月に対し、レゴラフェニブ群の患者では2カ月であった。
レゴラフェニブは、本剤で治療した患者の中には臨床試験中に重度の致命的な肝毒性が生じた患者がいたことを、患者および医療従事者に知らせる黒枠警告付で承認されている。最も多くみられた副作用には脱力感、倦怠感、食欲減退、手足症候群、下痢、口腔内痛、体重減少、感染症、高血圧、および声量や声質の変化などがあった。
本剤はFDAの優先審査プログラムで承認された。この審査は治療に大きな進歩をもたらす可能性のある薬剤や他に適切な治療法が存在しない場合に治療を提供できる薬剤を、優先的に6カ月で審査するものである
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小高良子 訳
小宮武文(腫瘍内科/NCI Medical Oncology Branch) 監修
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