乳腺腫瘤摘出後の放射線治療が高齢の早期乳癌患者に有効

キャンサーコンサルタンツ

Cancer誌のオンライン速報版で発表された研究結果によると、乳腺腫瘤摘出後の放射線治療が、高齢女性における治療後の乳房切除の必要性を抑える可能性がある。

米国では毎年20万人以上が乳癌と診断されるが、そのおよそ40%が65歳以上の女性である。そのため、こうした高齢集団に対する最適な治療法を定めることは重要である。

早期乳癌に対する外科手術には、乳房切除術や乳腺腫瘤摘出がある。乳房切除は乳房全体を取り除くが、乳腺腫瘤摘出は癌腫や一部の周囲組織を取り除く。乳腺腫瘤摘出後の放射線治療が、乳房内やその近傍における癌の再発リスクを低減させることが示されている。この治療法は若い女性によく使われるが、高齢女性に対しては、乳腺腫瘤摘出後にタモキシフェンやアロマターゼ阻害剤のようなエストロゲンを抑制あるいは阻止するホルモン療法を行うのが標準的である。研究者は、放射線照射が高齢女性に対して有効である可能性について研究を続けている。

NCCNガイドラインでは、高齢女性に乳腺腫瘤摘出後にホルモン療法を追加することを推奨しているが、それは、高齢女性では放射線治療とホルモン療法とで乳房切除率や生存率に違いがみられなかった、という研究結果に基づいている。しかしながら、乳房切除率について長期に追跡調査したデータはこれまでなかった。

この問題を評価するため、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者は、米国国立癌研究所のSurveillance Epidemiology and End ResultsSEER)登録で特定したメディケア患者のコホート研究を実施した。この研究には早期のエストロゲン陽性乳癌で乳腺腫瘤摘出を受けた70〜79歳の7403人のデータが含まれている。すべての患者が1992年から2002年までの間に診断され、2007年まで追跡された。全体で88%の女性が乳腺腫瘤摘出後に放射線治療を受けていた。

この結果から、放射線治療を受けた女性では、治療後10年以内の乳房切除率が低下することが示された。放射線治療を受けなかった女性の6.3%が乳腺腫瘤摘出後に乳房切除を受けていたが、放射線治療を受けた女性ではそれが3.2%であった。他の要因に関係なく、腫瘍悪性度の高い女性には放射線が有効であるようだった。しかしながら放射線が有効でない女性も一部存在し、彼らは年齢が75〜79歳で高悪性度腫瘍をもたない女性であった。

研究者は、多くの高齢初期乳癌女性において、乳腺腫瘤摘出後の放射線治療が治療後の乳房切除のリスクを低減させる、と結論付けている。

参考文献:
Albert JM, Pan IW, Shih YCT, et al. Effectiveness of radiation for prevention of mastectomy in older breast cancer patients treated with conservative surgery. Cancer. Published early online August 13, 2012. DOI: 10.1002/cncr.27457


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 井上陽子

監修 原野謙一(乳腺・婦人科癌/日本医科大学武蔵小杉病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

転移トリネガ乳がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の効果予測ツールを開発の画像

転移トリネガ乳がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の効果予測ツールを開発

ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターおよびジョンズホプキンス大学医学部の研究者らは、転移を有するトリプルネガティブ乳がんにおいて、免疫療法薬の効果が期待できる患者をコンピュータツ...
FDAが高リスク早期乳がんに対し、Kisqaliとアロマターゼ阻害剤併用およびKisqali Femara Co-Packを承認の画像

FDAが高リスク早期乳がんに対し、Kisqaliとアロマターゼ阻害剤併用およびKisqali Femara Co-Packを承認

米国食品医薬品局(FDA)2024年9月17日、米国食品医薬品局(FDA)は、ホルモン受容体(HR)陽性、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性の再発リスクの高いステージIIおよびI...
乳がん後の母乳育児が安全であることを証明する初めての研究結果の画像

乳がん後の母乳育児が安全であることを証明する初めての研究結果

● 欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2024で発表された2つの国際的な研究により、乳がん治療後に母乳育児をした女性において、再発や新たな乳がんの増加はないことが示された。
● この結果は、乳...
HER2陽性乳がんの脳転移にトラスツズマブ デルクステカン(抗体薬物複合体)が有効の画像

HER2陽性乳がんの脳転移にトラスツズマブ デルクステカン(抗体薬物複合体)が有効

• 大規模な国際共同臨床試験において、トラスツズマブ デルクステカンは、HER2陽性乳がん患者の脳転移に対して優れた抗がん作用を示した。
• 今回の結果は、今まで行われてきた複数の小規模...