アバスチンを化学療法に併用することで、乳癌進行を遅延

キャンサーコンサルタンツ
2009年12月

2つの第3相臨床試験の結果によると、進行乳癌患者女性で、アバスチン(ベバシズマブ)を一次化学療法または二次化学療法に併用することで、癌の進行を遅延させることができるが、全生存期間は延長しない可能性があることが分かった。これらの結果は、2009年度サンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)で報告された。

アバスチンは、VEGFと呼ばれるタンパク質を阻害する分子標的治療薬である。VEGFは、血管新生で重要な役割を果たす。アバスチンは、VEGFを阻害することで、癌から栄養素と酸素を不足させ、癌の成長を阻止する。血管に対するアバスチンの効果により、腫瘍への化学療法剤の到達も向上する可能性がある。

アバスチンは、タキサン系抗がん剤と併用した場合に、転移乳癌の患者に効果があることが示されている。[1]

このAVADO試験は、未治療の局所再発または転移乳癌に対して行われた第3相二重盲検プラセボ対照試験であり、アバスチンとタキソテール(ドセタキセル)の併用が、タキソテール単独の場合と比較された。HER2陰性乳癌に罹患している適格患者は無作為に割り付けられ、タキソテールとプラセボの併用投与(100 mg/m2の量で3週間ごとに投与し、最大9サイクル継続)またはタキソテールとアバスチンの併用投与(7.5または15 mg/kgの量で投与し、病勢が増悪するか、続行困難な有害事象が発生するまで継続)を受けた。この調査には、24カ国から736人の患者が参加した。10.5カ月間追跡した初期段階での結果は、2008年度のASCO年次総会で発表された。この初期分析では、アバスチンを投与した集団で無増悪生存期間(PFS)の有意な延長および奏効率(ORR)の向上が示された。2009年度のASCOでは、追跡期間中央値25カ月におけるAVADO試験の結果が発表された[2]。表1は、これらの分析の主要結果の要約である。

表1:AVADOランダム化試験でのアバスチンの効果

 プラセボアバスチン7.5 mg/m2アバスチン15 mg/m2
患者数241248247
死亡44%47.6%47.0%
全生存期間中央値31.9カ月30.8カ月30.2カ月
PFS中央値8.1カ月9.0カ月10.0カ月
ORR76%81%84%
1年生存率76%81%84%

SABCSで発表された第2の試験(RIBBON-2試験)では、転移性HER2陰性乳癌の二次化学療法へのアバスチン併用が評価された[3]。この試験で患者は2:1の割合で、化学療法とアバスチンの併用投与と、化学療法とプラセボの併用投与に無作為に割り付けられた。表2は、この臨床試験の主な結果である。

表2:RIBBIB-2臨床試験におけるアバスチンの効果

 化学療法とプラセボの併用化学療法とアバスチンの併用
患者数225450
PFS中央値5.1カ月7.2カ月
ORR29.6%39.5%
全生存期間中央値16.4カ月18.0 (p=0.019)
重症急性事象17.6%24.6%

コメント:
これらの試験では、一次または二次化学療法にアバスチンを併用することで、進行HER2陰性乳癌の進行を遅延可能なことが示されている。しかし、アバスチン投与で全生存期間が延長するかどうかについては、未だ明確な証拠はない。

参考文献:

[1] Miller K, Wang M, Gralow J, et al. Paclitaxel plus bevacizumab versus paclitaxel alone for metastatic breast cancer. New England Journal of Medicine. 2007;357:2666-2676.

[2] Miles DW. Final overall Survival (OS) Results from the Randomised, Double-Blind, Placebo-Controlled, Phase III AVADO Study of Bevacizumab (BV) Plus Docetaxel (D) Compared with Placebo (PL) Plus D for the First-Line Treatment of Locally Recurrent (LR) or Metastatic Breast Cancer (mBC). Presented at the 32nd CTRC-AACR San Antonio Breast Cancer Symposium. December 9-13, 2009. San Antonio, TX. Abstract 41.

[3] Brufsky A. RIBBON-2: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Phase III Trial Evaluating The Efficacy And Safety Of Bevacizumab In Combination With Chemotherapy For Second-Line Treatment Of HER2-Negative Metastatic Breast Cancer. Presented at the 32nd CTRC-AACR San Antonio Breast Cancer Symposium. December 9-13, 2009. San Antonio, TX. Abstract 42.



  c1998-CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 桝谷 哲

監修 野長瀬 祥兼(工学/医学生)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

欧州臨床腫瘍学会(ESMOアジア2024)ハイライトの画像

欧州臨床腫瘍学会(ESMOアジア2024)ハイライト

ESMOアジア会議2024は、アジア地域における集学的腫瘍学に特化した年次イベントである。新しい治療法、特定のがん種の管理に関する詳細な議論、アジア全域を対象とした臨床試験、アジア地域...
喫煙はいかにして乳がん放射線治療を複雑にするのかの画像

喫煙はいかにして乳がん放射線治療を複雑にするのか

放射線治療は基本的ながん治療のひとつであり、乳がんを含むさまざまながん種での治療に用いられている。 
放射線治療は、放射線(通常はX線)を用いてがん細胞のDNAを損傷させ、がん細胞を破壊...
がんにおけるエストロゲンの知られざる役割ー主要な免疫細胞を阻害の画像

がんにおけるエストロゲンの知られざる役割ー主要な免疫細胞を阻害

エストロゲンは、その受容体を持つ乳がん細胞の増殖を促進することが知られているが、デュークがん研究所による新たな研究では、エストロゲンが、他のがんと同様に、受容体を持たない乳がんにおいて...
乳がん個別化試験で、免疫陽性サブタイプにDato-DXd+イミフィンジが効果改善の画像

乳がん個別化試験で、免疫陽性サブタイプにDato-DXd+イミフィンジが効果改善

早期乳がんに対し、抗体薬物複合体Dato-DXdと免疫チェックポイント阻害薬デュルバルマブの術前併用療法が有用である可能性がI-SPY 2.2試験で示された。乳がんは、米国およ...