FDAがHER2陽性進行性乳癌治療薬Perjeta(ペルツズマブ)を承認/FDAニュース
FOR IMMEDIATE RELEASE: 2012年6月8日
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FDAがHER2陽性末期乳癌治療薬Perjeta(ペルツズマブ)を承認
米国食品医薬品局(FDA)は、HER2陽性進行性(転移性)乳癌治療の新薬、抗HER2抗体製剤Perjeta(ペルツズマブ)を承認した。
Perjetaは、同様に抗HER2抗体製剤であるトラスツズマブ+化学療法剤ドセタキセルと併用で、抗HER2抗体製剤および化学療法剤による治療歴のない転移性乳癌患者を対象とする。
HER2は正常細胞の増殖に関るタンパク質で、一部の乳癌など特定の癌細胞で過剰発現が見られる(HER2陽性)。HER2陽性乳癌では、HER2タンパクの増幅が癌細胞の増殖および生存に関与している。
バイオテクノロジーの手法を用いて製造されるPerjetaはヒト化モノクローナル抗体であり、静脈内投与される。トラスツズマブとは別の箇所のHERタンパクを標的とすることで、HER2陽性乳癌細胞の増殖と生存抑制をさらに誘導すると考えられている。
Perjetaには長期供給に影響が出る可能性のある生産上の課題があるため、本日の承認でFDAは、生産上の問題による影響を受けない承認内容に限定した。Perjetaの製造元であるジェネンテック社は、この課題を早急に解決するための手段を講じると明言している。
FDA医薬品評価研究センター局長であるJanet Woodcock医師は、「転移性乳癌患者の追加的治療の必要性を考慮し、将来の供給に関して未解決の生産課題があるからといって同剤の利用に待ったをかけず承認に踏み切りました」とし、「ジェネンテック社はPerjetaに欠品が生じた場合における患者への影響を緩和するための対策を練っています」と述べている。
乳癌は、女性の癌による死亡原因の第2位である。予測では年間226,870人の女性が乳癌と診断され、39,510人が乳癌により死亡する。こうした乳癌患者の約20%にHER2陽性タンパクの過剰発現がみられる。
FDA医薬品評価研究センター血液腫瘍製品室長のRichard Pazdur医師は、「トラスツズマブが初めて承認されたのは10年以上前です。以来、研究が続けられ、乳癌におけるHER2関与の解明が進み、トラスツズマブとPerjetaという二つの標的薬を一緒にドセタキセルと併用することで乳癌の進行を抑制するという、この療法へとつながりました」と語った。
Perjetaの安全性および有効性は、HER2陽性転移性乳癌患者808人を対象とした臨床試験で評価された。患者は事前にHER2タンパクの増加を確認するための検査を受け、Perjeta+トラスツズマブ+ドセタキセル群もしくはトラスツズマブ+ドセタキセル+プラセボ群に無作為に割り付けられた。
この臨床試験は、患者が癌の進行なく生存した期間、つまり、無増悪生存期間(PFS)の評価を目的に実施された。プラセボの併用投与を受けた患者のPFS中央値が12.4ヵ月であったのに対して、Perjetaの併用投与を受けた患者のPFS中央値は18.5ヵ月であった。
Perjetaをトラスツズマブならびにドセタキセルと併用投与された患者に発現した頻度の高い副作用は下痢、脱毛、感染を防御する白血球の減少、吐き気、倦怠感、発疹、神経障害(末梢感覚神経障害)であった。
Perjetaは、患者および医療専門家に対し胎児の死亡もしくは先天異常をもたらすリスクの可能性についての警告欄を設けることを条件に承認されている。Perjetaによる治療の際には妊娠の有無を確認する必要がある。
Perjetaは、治療に大きな進歩をもたらす可能性のある医薬品については審査期間を6ヵ月に短縮するFDA迅速審査の対象として優先審査された。
Perjetaは、ロッシュグループで南サンフランシスコに本社を置くジェネンテック社が販売している。
詳しい情報については以下を参照のこと:
FDA: Office of Hematology and Oncology Products(血液腫瘍製品室)〔原文〕
FDA: Approved Drugs: Questions and Answers(承認薬:質問と回答)〔原文〕
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村上智子 訳
辻村信一(獣医学/農学博士、メディカルライター)監修
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