乳癌治療後の倦怠感は時間とともに自然に消滅しうる

キャンサーコンサルタンツ

癌に伴う倦怠感は、早期乳癌治療後に高頻度で発症する。しかし、新規の研究結果により、倦怠感は時間とともに自然消滅するという事実がJournal of Clinical Oncology誌に発表された。

乳癌は、米国女性では皮膚癌を除くと最も高頻度で診断される癌種である。毎年、約227,000人の女性が乳癌と診断され、40,000人近くが死に至る。早期乳癌治療には、乳房温存手術、放射線治療、および、適切な時期での化学療法やホルモン療法などの全身療法などが含まれる。

治療後、乳癌サバイバーの中には、長期にわたり身体機能を低下させる倦怠感などの副作用に悩まされる場合もある。この倦怠感は、癌に伴う全身倦怠感と呼ばれる。倦怠感の基礎原因に関しては明確になっておらず、その有効な予防法および治療戦略が存在しない。

オーストラリアの研究者達は、早期乳癌に対する補助療法を数種受けた女性患者218人から成るコホートにおける倦怠感を調査した。患者は手術後に同研究に登録し、治療終了後1、3、6、9、12カ月目、および5年目に追跡調査を受けた。各回の調査で参加者は、一定の問診を受け、身体的および精神的な健康に関する質問表に回答した。

治療直後に参加者の31%に倦怠感が認められた。しかしながら、倦怠感の発現率は治療後6カ月で11%に低下し、治療後1年では6%に低下した。6カ月経っても持続性倦怠感が認められる参加者を検査して、甲状腺機能低下症やうつ病など、他の病因によるものを除外した。

研究者らは、倦怠感が重大な身体機能の低下および医療の利用と関連する事実に注目した。治療後数カ月経っても、倦怠感を示す患者がいる理由は明らかではなかった。炎症が倦怠感の要因になる可能性、または化学療法に対する過剰反応を引き起こす遺伝的素因を有する患者もいる可能性があると推測できる。現在のところでは、これらの理論を立証する成績は存在していない。

研究者らは、倦怠感は早期乳癌治療を受けた女性に高頻度で発症するが、多くの場合、時間の経過とともに自然治癒するという結論に至った。倦怠感に悩まされている女性は、健康的な食生活を送り、規則正しい運動および睡眠をとることで、利益を得る可能性がある。

参考文献:

Goldstein D, Bennett BK, Webber K, et al. Cancer-related fatigue in women with breast cancer: outcomes of a 5-year prospective cohort study. Journal of Clinical Oncology. Published early online: April 16, 2012. doi:10.1200/JCO.2011.34.6148


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翻訳担当者 渡邊 岳

監修 辻村信一 (獣医学/農学博士、メディカルライター)

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