ペプチドワクチンにより乳癌患者の免疫応答が惹起される

  • 再発防止目的のワクチンに対し、乳癌患者の応答は良好であった
  • ワクチン接種群の患者において、制御性T細胞が減少した
  • 免疫学的検査により、ペプチドワクチンに対する応答者が特定できる可能性がある

シカゴ発 ― HER2由来ペプチドワクチンAE37を接種された乳癌患者において、対照群と比較して高い免疫応答が得られたことを示す24カ月の試験結果が、3月31日~4月4日に当地で開催されたAACRの2012年次総会において発表された。

「いったん特定のペプチドに対する応答を獲得すると、再発した場合に身体が癌を悪いもの、つまり異物と認識するという理論です。」テキサス州ヒューストン、フォートサムのBrooke Arm医療センター 一般外科の研究レジデントであるDiane F. Hale医師は述べる。「免疫マーカーの測定により、再発する可能性のある患者が特定できるようになるかもしれません。」

本臨床試験は、前向き、ランダム化、単盲検の第2相試験であり、登録した217人はすべて乳癌の標準治療を受け、臨床試験開始時点では癌を再発していなかった。

「再発のリスクがもっとも高い、高リスク患者で試験を行いたかったため、リンパ節転移陽性患者、またはリンパ節転移は陰性だがER/PR陰性など他の予後因子が不良の患者を試験に含めました。」Hale医師は述べる。

109人の患者にはAE37に免疫増強剤として顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)を加えたもの、108人にはGM-CSFのみを、月1回、6カ月間にわたり皮内注射した。

in vivo遅延型過敏反応を評価するために、治療に用いる用量より少量のワクチンを皮下に注射し、5 mm 以上の身体的反応を観察した。ワクチン接種群では患者の86%に反応が認められ、対照群の27%と比較して有意に高率であった。

さらに、in vitroにおけるリンパ球増殖反応を評価した結果、ワクチン接種群では対照群よりも応答者が多いことが判明した。stimulation index(刺激指数)による評価では、対照群には反応不良者が多かった。

「当然ながら、ワクチン接種群では対照群と比較して有意に高い応答が得られました。患者はHER2ペプチドに対してこのような免疫刺激を受けていなかったのですから。」Hale医師は述べる。

さらに、107人の患者について、制御性T細胞の反応を測定した。ワクチン接種群では、接種前のベースラインと比較して「制御性T細胞が減少した患者の割合が高かったのです。」Hale医師は述べる。ペプチドワクチン接種群の41%、対照群の28%で制御性T細胞が90%以上減少した。

ワクチン接種期間中の免疫学的検査結果と制御性T細胞をモニタリングすることで、患者をワクチン応答者と反応不良者に識別できる可能性がある。「将来的には、再発する可能性のある患者を特定できるようになるかもしれません。」Hale医師は言う。

# # #

資格要件を満たしたジャーナリストおよび行政関係広報担当者のAACR 2012年次総会の取材登録は無料:www.aacr.org/PressRegistration.
TwitterでAACRをフォロー: @aacr #aacr
FacebookでAACRをフォロー:http://www.facebook.com/aacr.org

AACRについて

米国癌学会(AACR)は1907年に設立され、癌研究の促進および癌予防・治療の使命に尽力している、世界初で最大の専門組織である。AACRの会員は、基礎・応用・臨床の研究者、人口動態学者、その他の医療専門家、癌の患者会など、世界90カ国以上の34,000人にのぼる。AACRは、あらゆる領域の癌関連コミュニティから専門知識を集結し、学術集会や教育ワークショップを年20回以上開催して癌の予防、生物学、診断及び治療の発展を促進している。中でも最大規模のものが、18,000人を超える参加者が集うAACR年次総会である。さらに、論文審査のある学術雑誌7誌、および癌サバイバー・患者・介護者向けの雑誌1誌を発行している。また、AACR は、功績ある研究に対し、直接、あるいは多数の癌関連機関と共同で資金を提供しているほか、「Stand Up To Cancer」の学術パートナーとして、患者に有益となり得る個人またはチームへの癌研究助成金に対し、専門的評価、資金管理および科学的監視を行っている。AACRは、癌研究および関連生物医科学の、癌から生命を守る上での重要性に関し、国会議員や政策立案者にも積極的に意見している。

米国癌学会について、詳細はこちら:www.AACR.org
メディア連絡先:
Jeremy Moore
(215) 446-7109
Jeremy.Moore@aacr.org

翻訳担当者 石岡優子

監修 原野謙一(乳腺科・婦人科癌・腫瘍内科/日本医科大学武蔵小杉病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

乳がんリスク評価ツールの仕組みの画像

乳がんリスク評価ツールの仕組み

2024年3月、女優のオリヴィア・マン(Olivia Munn)が乳がんと診断されたことを発表した。Munnさんはまた、がんリスク評価ツールが彼女の診断に至る過程で果たした役割を強調し...
ハイリスク遺伝子を有する若年乳がんサバイバーの生殖補助医療は安全の画像

ハイリスク遺伝子を有する若年乳がんサバイバーの生殖補助医療は安全

ハイリスク遺伝子があり、乳がん後に妊娠した若い女性を対象とした初の世界的研究によれば、生殖補助医療(ART)は安全であり、乳がん再発リスクは上昇しないハイリスク遺伝子があり、乳...
【ASCO2024年次総会】T-DXd(エンハーツ)がホルモン療法歴のある乳がん患者の無増悪生存期間を有意に改善の画像

【ASCO2024年次総会】T-DXd(エンハーツ)がホルモン療法歴のある乳がん患者の無増悪生存期間を有意に改善

ASCOの見解(引用)「抗体薬物複合体(ADC)は、乳がん治療において有望で有益な分野であり、治療パラダイムにおける役割はますます大きくなっています。トラスツズマブ デルクステ...
【ASCO2024年次総会】若年乳がん患者のほとんどが治療後に妊娠・出産可能の画像

【ASCO2024年次総会】若年乳がん患者のほとんどが治療後に妊娠・出産可能

ASCOの見解(引用)「乳がんの治療後も、妊娠や出産が可能であるだけでなく安全でもあることが、データが進化するにつれて次々と証明されてきています。この研究では、妊娠を試みた乳が...