局所乳癌に対する術後加速小分割照射法は、従来の放射線療法と同等の効果が認められる

キャンサーコンサルタンツ
2010年2月

術後加速小分割照射法は、局所乳癌に対して従来の放射線療法と同等の効果が認められるとして、カナダの研究者らにより報告された。本試験の詳細はNew England Journal of Medicine誌2010年2月11日号に掲載された。[1]

リンパ節陰性が認められる原発性局所乳癌女性患者に対して、現在は乳腺腫瘤摘出術とその後の放射線療法を用いた治療が行なわれている。放射線治療は、乳腺腫瘤摘出術後の局所再発率を減少させるが、全生存率は改善しない可能性がある。女性乳癌患者に対し放射線療法を行う方法は施設によって異なる。このうち全治療期間35日で月曜日から金曜日まで2Gyずつ総線量50Gyを照射した後、腫瘍部位に対して追加照射を行う方法がある。この代替方法として、分割線量を増やし、総線量を減らして治療期間を短縮させた治療(小分割照射法)が用いられる。本法は、分割線量増加と治療期間の短縮化により腫瘍細胞殺傷作用が高まるという生物学的原理に基づいた療法である。照射期間の短縮化は、再発頻度や副作用発現の増加が伴わければ、利便性および費用効率が高くなる。術後小分割照射法は、乳癌の局所再発予防について従来の30日間以上の放射線療法と同等の効果があるというエビデンスが集積されている。

今回の試験では、乳房温存手術を受けた侵襲性乳癌を有する女性患者1,234人について、従来の術後放射線療法あるいは加速放射線療法のいずれかに無作為に割り付けた。全例切除断端陰性かつ腋窩リンパ節は陰性であった。通常分割照射は35日間にわたり25回分割で総照射量50Gyを照射し、加速放射線療法は22日間にわたり16回分割で総線量42.5Gyを照射しました。10年間の追跡調査結果は以下のとおりである。

  • 局所再発率は、標準放射線療法群で6.7%に対し加速放射線療法群では6.2%であった。
  • 美容的結果については、標準放射線療法群では71.3%、加速放射線療法群で69.8%となり、優れた試験成績が得られた。

コメント:同研究者らは「治療後10年で、切除断端陰性で腋窩リンパ節陰性の浸潤性乳癌に対して乳房温存手術を受けた女性において加速小分割全乳房照射法は標準的な放射線療法に劣っていなかった。」と結論付けた。

参考文献:
[1] Whelan TJ, Pignol J-P, Levine MN, et al. Long-term results of hypofractionated radiation therapy for breast cancer. New England Journal of Medicine. 2010;362:513-520.


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翻訳担当者 菅原 宣志

監修 平 栄(放射線腫瘍科/武蔵村山病院) 

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