骨粗鬆症治療薬ビスフォスフォネート製剤により乳癌リスクが低減

キャンサーコンサルタンツ
2010年3月

骨粗鬆症治療にビスフォスフォネート製剤を使用することにより乳癌の発症リスクが低下する可能性があるとウィスコンシン大学の研究者らが報告した。本研究の詳細はBritish Journal of Cancer誌2010年3月1日号に発表された。[1]

ビスフォスフォネート剤は、女性の骨粗鬆症の予防や治療のために癌に罹患していてもしていなくても用いられることが多くなってきている。ビスフォスフォネート剤の抗癌作用は一層明らかになってきており、早期乳癌女性に対する効果が最も高く評価されている。また、実験室での研究ではビスフォスフォネート剤がタンパク質プレニル化および腫瘍血管新生を阻害することによる抗癌作用を示唆している。しかし、骨粗鬆症の女性が乳癌を予防するためにビスフォスフォネート製剤を用いた場合に予想される効果を評価する試験は実施されたことがない。

今回の試験では、2003年から2006年にかけてウィスコンシン州で集団ベースの症例対照研究を実施し乳癌発症リスクを評価した。この試験は、浸潤癌の女性約3,000人と乳癌ではない女性3,000人を対象としたもので、現在骨粗鬆症治療のためにビスフォスフォネート剤を使用している患者の方が、使用していない患者よりも乳癌発症リスクが33%低かったと報告している。ビスフォスフォネート剤の使用期間を延長すれば予防効果が高まることも報告されている。さらに、ビスフォスフォネート剤によるリスクの減少は肥満ではない女性にのみ認められたと述べている。

コメント:本試験結果は示唆的なものであり、検証のためにさらに大規模な試験による追跡調査が確実に実施されるであろう。

参考文献:[1] Newcomb PA, Trentham-Dietz and Hampton JM. Bisphosphonates for osteoporosis are associated with reduced breast cancer risk. British Journal of Cancer. 2010;102:799-802.


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翻訳担当者 多和郁恵

監修 千種葉月(薬学)

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