マンモグラフィ検診は延命効果がないことがデンマークの研究結果で確認された
キャンサーコンサルタンツ
2010年3月
マンモグラフィ定期健診を実施している地域に住む女性は、定期健診を実施していない地域に住む女性と比較して、乳癌による死亡のリスクが低いというエビデンスが得られなかったことがデンマークの研究者らにより報告された。本研究の詳細は、2010年3月23日の電子版British Medical Journal誌で発表された。1
過去数年の間、乳癌検診プログラムの乳癌死亡率を減少させる能力に疑問を投げかける文献が出され続けている。また、マンモグラフィ検診が転移および死に至る可能性のない上皮内癌の過剰診断につながるという批判もある。このような批判の結果、比較的数多くの分析が行われ、総じてマンモグラフィ検診には早期の癌を発見して死亡を予防する効果が確認されたという結果であった。しかし、ランダム化試験では延命効果を明確に示すことができず、ほとんどの場合偶然に検診を受けていない群と検診参加の案内を受けて検診を受けた群との間の比較であることを指摘しなければならない。
2005年にデンマークの研究者らは、1991年に開始されたマンモグラフィ検診により「患者に重篤な副作用もなく」乳癌死亡率が低下したと報告した。この研究の対象はコペンハーゲンに住む検診の案内を受けた大規模な女性群である。検診開始時、デンマークのコペンハーゲンは他の地域よりも乳癌罹患率の高い地域であった。デンマークのほとんどの地域で検診が行われておらず、これらの地域が対照群としての役割を果たした。研究の対象者は50歳から79歳の女性で、乳癌罹患率および乳癌死亡率が最も高いのは75歳から79歳の年齢群であった。同時期に検診を受けていない女性の母集団および歴史的対照群との比較により、「検診期間中の乳癌死亡率は、検診を実施していない場合の予想と比較して25%低下」という結論に達した。検診の案内を受けたが参加しなかった女性を除外した場合の乳癌死亡率の低下は37%であった。
今回の研究は「検診の地域を追加してさらに5年間の追跡を行うことによって、前回報告したとおりマンモグラフィによる乳癌検診導入後コペンハーゲンで乳癌死亡率が25%低下したのは本当に検診によるものなのかどうか」を確認するために実施された。今回の分析は、1991年に乳癌検診のマンモグラフィが導入されたコペンハーゲンのデータおよび1993年に検診が導入されたFunen郡のデータを利用した。デンマークの人口の80%が検診を受けていない対照群に相当した。
- 55歳から74歳の女性の乳癌死亡率は、非検診地域で年間2%低下したのに対し、10年以上検診を実施した地域では年間1%の低下であった。
- 年齢が若いため検診の効果が得られない35歳から55歳の女性の場合、乳癌死亡率は、非検診地域で年間6%低下したのに対し、検診地域では年間5%の低下であった。
- 75歳から84歳の女性の乳癌死亡率の場合、検診地域と非検診地域の間に差は見られなかった。
本試験の著者らは、「デンマークの乳癌検診プログラムが乳癌死亡率に及ぼす効果を明らかにすることはできなかった。検診地域で観察した乳癌死亡率の低下は、非検診地域および若すぎるため検診の効果が得られない群と同等またはそれ以下で、乳癌死亡率が低下したのはマンモグラフィ検診によるものではなく、リスク要因の変化および治療法の改善により説明がつく可能性が高い」と結論を出した。
コメント:本試験の著者らは、前回の観察結果は正確でなく、マンモグラフィ検診は乳癌死亡率に影響がないと結論している。今回の観察結果は、その他多数の研究と相容れないことから、米国のマンモグラフィに関する政策決定に影響を与える可能性は低い。
参考文献:
1 Jorgensen KJ, Zahl P-H, and Gotzsche PG. Breast cancer mortality in organised mammography screening in Denmark: comparative study. British Medical Journal [early online publication]. March 23, 2010.
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