アロマシンは乳癌に対し有益性を示すが、骨に悪影響を与える

キャンサーコンサルタンツ

乳癌のリスクが高い閉経後の健康な女性において、アロマターゼ阻害剤のアロマシン(エキセメスタン)は乳癌のリスクを減少させるが、骨量減少も増加させる。これらの結果がLancet Oncology誌で発表された。

エストロゲンの効果を阻害する薬剤は、乳癌のリスクが高い女性において、その疾患のリスクを減少させることが示されている。女性のある特定のグループにおける乳癌のリスク減少を適応として、タモキシフェンとエビスタ(ラロキシフェン)の2つの薬剤が承認されている。タモキシフェンは乳癌のリスクが高い患者(リスクが高い閉経前の女性を含む)のリスク減少を適応として承認された。エビスタは元々骨粗鬆症の予防と治療を適応として承認されており、その後、骨粗鬆症を合併した閉経後の女性、あるいは乳癌のリスクが高い閉経後の女性に対する乳癌のリスク減少を適応として承認されている。

アロマターゼ阻害剤は閉経後の女性におけるエストロゲンの産生を阻害する薬剤である。これらの薬剤は、通常、ホルモン受容体陽性乳癌の治療で使用されているが、乳癌の予防に有効である可能性もある。そこで、MAP.3として知られる第3相臨床試験において、アロマターゼ阻害剤であるアロマシンの乳癌予防効果が評価された。本研究では乳癌のリスクが高い閉経後の女性患者4560人が登録された。患者はアロマシンかプラセボのいずれかによる治療を受け、結果として、アロマシンは乳癌になる可能性を大幅に減少させることが示された[1]。

アロマシンのようなアロマターゼ阻害剤は乳癌に対し有益性を示すが、これらの薬剤は骨に悪影響を与えることも報告されている。乳癌予防のためにアロマシンを使用している健康な女性において、本薬剤が骨に与える影響を調査する目的で、MAP.3試験に参加した女性の一部を対象に評価を行った。2年間の追跡調査を受けた閉経後の女性242人に関する情報が利用可能であった。[2]

高解像度末梢骨定量的CT測定法として知られる高度な技術を用いて骨密度を評価した。本技術は一般的に使用されている二重エネルギーX線吸収法(dual-energy x-ray absorptiometry (DXA))スキャンと比較して、骨密度をより正確に測定可能であり、さらにその情報量がより多いと考えられている。

2年間の治療の間に、橈骨遠位端(手首)の骨密度はプラセボ群では1.8%減少し、アロマシン治療群では6.1%減少した。骨密度に関する他の測定値もアロマシン治療群の方が悪化していた。これらの骨密度の変化が骨折のリスクへ与える影響を調査するには、より長い追跡期間が必要になるだろう。

これらの結果から、アロマシンの使用により、健康な閉経後の女性患者における骨量減少が増加することが明らかになった。乳癌予防に対するアロマシンの有益性は、本薬剤の骨への有害な効果を考慮する必要がある。

参考文献:
[1] Goss PE, Ingle JN, Ales-Martinez JE et al. Exemestane for breast-cancer prevention in postmenopausal women. New England Journal of Medicine. 2011;364:2381-91.
[2] Cheung AM, Tile L, Cardew S et al. Bone density and structure in healthy postmenopausal women treated with exemestane for the primary prevention of breast cancer: a nested substudy of the MAP.3 randomised controlled trial. Lancet Oncology. Early online publication February 7, 2012.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 下野龍太郎

監修 須藤智久(薬学/国立がん研究センター東病院 臨床開発センター)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

乳がんリスク評価ツールの仕組みの画像

乳がんリスク評価ツールの仕組み

2024年3月、女優のオリヴィア・マン(Olivia Munn)が乳がんと診断されたことを発表した。Munnさんはまた、がんリスク評価ツールが彼女の診断に至る過程で果たした役割を強調し...
ハイリスク遺伝子を有する若年乳がんサバイバーの生殖補助医療は安全の画像

ハイリスク遺伝子を有する若年乳がんサバイバーの生殖補助医療は安全

ハイリスク遺伝子があり、乳がん後に妊娠した若い女性を対象とした初の世界的研究によれば、生殖補助医療(ART)は安全であり、乳がん再発リスクは上昇しないハイリスク遺伝子があり、乳...
【ASCO2024年次総会】T-DXd(エンハーツ)がホルモン療法歴のある乳がん患者の無増悪生存期間を有意に改善の画像

【ASCO2024年次総会】T-DXd(エンハーツ)がホルモン療法歴のある乳がん患者の無増悪生存期間を有意に改善

ASCOの見解(引用)「抗体薬物複合体(ADC)は、乳がん治療において有望で有益な分野であり、治療パラダイムにおける役割はますます大きくなっています。トラスツズマブ デルクステ...
【ASCO2024年次総会】若年乳がん患者のほとんどが治療後に妊娠・出産可能の画像

【ASCO2024年次総会】若年乳がん患者のほとんどが治療後に妊娠・出産可能

ASCOの見解(引用)「乳がんの治療後も、妊娠や出産が可能であるだけでなく安全でもあることが、データが進化するにつれて次々と証明されてきています。この研究では、妊娠を試みた乳が...