HER2陽性乳癌女性におけるネラチニブの効果

キャンサーコンサルタンツ
2010年3月

国際多施設共同臨床試験に参加した研究者らは、ハーセプチン(トラスツズマブ)の治療歴がある、または治療歴のないHER2陽性進行乳癌患者の治療に対して、ネラチニブによる有効性が認められたと報告した。本試験の詳細は、2010年3月10日付Journal of Clinical Oncology誌にて掲載された[1]。

乳癌の20〜25%にHER2過剰発現が認められる。このHER2タンパクの過剰発現により、癌細胞の増殖が促進され、乳癌の予後不良をもたらす。ハーセプチンは、HER2を特異的に標的とするHER2陽性乳癌の治療薬であり、現在のところ、その標的に対する唯一のFDA承認薬である。ネラチニブは、HER2、HER4、および上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とする臨床試験中の経口薬である。

今回の臨床試験では、ネラチニブ投与を受けたHER2陽性進行乳癌患者136人が対象となった。136人中、前治療としてハーセプチン投与を受けていない患者は70人、ハーセプチン投与を受けていた患者は66人であった。

•ハーセプチンの治療歴がある患者の場合、奏効率は24%、16週時点の無増悪生存率(PFSR)は59%、無増悪生存期間(PFS)中央値は22.3週であった。
•ハーセプチンの治療歴がない患者の場合、奏効率は56%、16週時点のPFSRは78%、PFS中央値は39.6週であった。
•ハーセプチンの治療歴がある患者に、より多くの下痢が認められた。

コメント:これらと他の試験から、ネラチニブはHER2陽性乳癌治療のための重要な薬剤となりうることが示唆される。HER2陽性進行乳癌の初回療法として、タキソールとネラチニブの併用療法を、ハーセプチンとタキソールの併用療法と比較するために、現在第3相臨床試験が進行中である。

参考文献:
[1] Burstein HJ, Sun Y, Dirix LY, et al. Neratinib, an irreversible ErbB receptor tyrosine kinase inhibitor, in patients with advanced ErbB-positive breast cancer. Journal of Clinical Oncology. 2010;28:1301-1307.


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翻訳担当者 栃木 和美

監修 原 文堅(乳腺/四国がんセンター)

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