タイケルブとタキソールの併用が炎症性乳癌に有効

キャンサーコンサルタンツ
2010年6月

Journal of Clinical Oncology誌で発表された研究結果によれば、タイケルブ(一般名ラパチニブ)とタキソール(一般名パクリタキセル)の併用が、炎症性乳癌の初回治療において有効と考えられる。

炎症性乳癌(IBC)は、乳癌の中では最も進行が早く、死亡率が高い癌である。この種の癌の多くは、チロシンキナーゼ受容体HER2あるいはEGFR Aまたはその両方を発現する。チロシンキナーゼは、細胞の増殖や生存に関与するタンパク質である。癌細胞においては、チロシンキナーゼの機能異常が散見されることから、いくつかの種類の癌では、同タンパク質を阻害する薬が重要な役割を果たす。タイケルブは、こうした作用を持つ薬のひとつである。同薬は、HER2とEGFRの両方を標的とする経口薬である。

IBCの初回治療として、タイケルブの連日投与と、それに引き続くタイケルブの連日投与と週1回のタキソールの投与を行うことの有効性、安全性、忍容性を評価するために、研究者らは、49人の女性を対象として研究を行った。参加者は、HER2-陽性の患者とHER2-陰性・EGFR-陽性の患者の2つのグループに分けられた。(ただし、参加者数が少ないこと、また、HER2-陰性・EGFR-陽性の患者に対する有効性の欠如を示す並行研究の結果が出たことから、同グループの試験は中止となった。)患者らは、タイケルブの投与を14日間受けた後、12週間のタイケルブの連日投与と週1回のタキソールの投与を受け、その上で、手術又は追加的な化学療法へと進んだ。

HER2-陽性の患者グループに対する全奏効率は78%であった。下痢、発疹、吐き気、脱毛などの一般的な副作用は、予想された程度であり、同患者の半数未満にこれらの症状が認められた。

研究者らは、タイケルブの連日投与と、それに引き続くタイケルブの連日投与と週1回のタキソールの投与は、HER2-陽性のIBCの患者の治療に有効であると結論づけている。この組み合わせ投与は、おおむね良好な忍容性を示し、予想外の副作用は認められなかった。

参考文献:

Boussen H, Cristofanilli M, Zaks T, et al. Phase II study to evaluate the efficacy and safety of neoadjuvant lapatinib plus paclitaxel in patients with inflammatory breast cancer. Journal of Clinical Oncology [early online publication]. June 7, 2010.


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翻訳担当者 青木伸子

監修 野長瀬祥兼(工学・医学)

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