電話による指導介入で乳がん患者の体重が減少
米国臨床腫瘍学会(ASCO)
ASCOの見解
「過体重が乳がんや乳がん再発のリスクを高めることは知られていますが、減量によってその影響をなくし、転帰を改善できるかどうかはまだわかっていません。減量は程度にかかわらず、達成も維持も困難です。本研究は、対面式のプログラムと比較して、より利用しやすく、費用対効果の高いアプローチである、電話による一貫した健康指導が、1年以上にわたって乳がん患者の体重減少に大きく貢献し、多様な患者群に有効であることを実証しています。減量が最終的に乳がん患者の転帰を改善するかどうかを確認するためにも、より長期の追跡調査の実施を切望します。」
-Elizabeth Anne Comen医師(ASCO専門家)-
*本記事には、抄録にはない追加データも含まれている。
肥満度指数(BMI)が過体重または肥満の領域にある乳がん患者は、電話での介入によって有意な減量を達成できる。本研究は、米国臨床腫瘍学会年次総会2023(ASCO2023)で発表される予定である。
試験要旨
目的 | BMIが過体重または肥満の領域にある乳がん患者の体重に対して、電話による減量指導が及ぼす影響 |
対象者 | BMIが27 kg/㎡以上で、過去14カ月以内にステージII~IIIのHER2陰性乳がんと診断された患者で、化学療法および放射線療法(受けた場合)を終了した3,181人 |
結果 | あらゆる患者群にわたって、介入群の患者は対照群の患者よりも有意に体重が減少し、12カ月後の体重は平均4.8%減少した(非黒人、非ヒスパニック:5.4%、ヒスパニック:3.2%、黒人:1.6%)。 対照群では、体重が平均0.9%増加した(非黒人・非ヒスパニック:0.7%、ヒスパニック:1.0%、黒人:2.1%)。 あらゆる患者群において、介入群では対照群と比較して有意な体重減少が認められたが、体重減少量はホルモン受容体の状態ではなく、閉経状態(体重減少群の閉経後女性は、体重減少群の閉経前女性よりも体重が大きく減少した)および人種・民族性によって異なっていた。 |
意義 | 電話による指導は費用対効果が高く簡単に利用できるため、多様な集団で体重を減少できる可能性がある。本研究は、体重減少ががんの転帰を改善するかどうかを、長期的に評価するための最初のステップである。 |
主な知見
Breast Cancer Weight Loss(BWEL)試験で用いられた、電話による指導介入は、年齢群、人種、民族性を問わず、体重減少介入群に無作為に割り付けられた約1,600人の試験参加者の体重減少に成功し、多様な乳がん患者の集団で体重減少が達成できることが示された。
あらゆる患者群で、介入群の患者は対照群の患者よりも有意に体重が減少し、12カ月で体重は平均4.8%減少した(非黒人、非ヒスパニック:5.4%、ヒスパニック:3.2%、黒人:1.6)。対照群では、体重が平均0.9%増加した(非黒人・非ヒスパニック:0.7%、ヒスパニック:1.0%、黒人:2.1%)。介入により、対照群と比較するとあらゆる患者群で有意な体重減少が見られたが、体重減少量はホルモン受容体の状態ではなく、閉経状態(減量群の閉経後女性の体重は、減量群の閉経前女性よりも大きく減少した)および人種・民族性によって異なった。
「本研究は、多様な乳がん患者の集団において、減量介入により体重をうまく減らすことができるという、説得力のある証拠を提供するものです。次のステップは、この体重減少が、がんの再発率や死亡率の低下につながるかどうかを判断することです。本試験ががんの転帰改善に成功すれば、乳がん生存者の標準治療に減量を取り入れるべきことを実証し、広範囲に影響を及ぼすでしょう」。筆頭著者であるJennifer A. Ligibel医師(FASCO、ダナファーバーがん研究所医学部准教授)は、このように述べた。
試験について
本試験は、BMIが過体重または肥満の領域にある、ステージII~IIIの乳がん患者に対し、体系化された減量プログラムで、がんの再発および死亡率を低減できるかどうかを評価するため、特にデザインされた最初の第3相試験である。2016年8月から2021年2月の期間、米国とカナダにある600以上の施設から、3,181人以上の患者が試験に参加した。本試験に適格な患者は、化学療法と放射線療法(受けた場合)を終了し、ステージII~IIIのHER2陰性乳がんの診断から14カ月以内であった。試験参加者の平均BMIは34.5 kg/m2、平均年齢は53.4歳であった。
診断時、患者の57%は閉経後で、80.3%が白人、12.8%が黒人、7.3%がヒスパニックであった。この試験では、試験参加者を介入群(電話による減量介入および健康教育)か対照群(健康教育のみ)に無作為に割り付けた。体重の変化は、ベースライン時および12カ月後の身長・体重測定時に測定し、グループ間で比較した。
次のステップ
次に、本試験の主要な転帰であるがんの再発と死亡率に、減量介入が影響を及ぼすかどうかを評価する。また本試験では、試験参加者の運動レベルや食事の変化も調査し、健康全般に対する減量介入の効果を、より深く理解することを目指す。また、代謝、炎症、および免疫経路に関連する、血清バイオマーカーの変化を解析し、肥満が乳がんに影響を及ぼす機序を明らかにする。
- 監訳 東海林洋子(薬学博士)
- 翻訳担当者 藤永まり
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- 原文掲載日 2023/05/25
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