MRI(乳癌)BRCA1/2変異保因者に費用対効果あり
キャンサーコンサルタンツ
2006年5月
スタンフォード大学研究者らの報告によれば、年齢35~54才のBRCA1またはBRCA2変異保因者に対し、乳癌スクリーニング検査においてマンモグラフィーに磁気共鳴映像法(MRI)を追加実施すると、費用対効果が得られる可能性がある。この結果については、the Journal of the American Medical Association 2006年5月24日号に掲載された。
乳癌の高リスク女性の早期乳癌スクリーニング検査について、年1回のマンモグラフィー検査と年2回の視・触診検査(CBE)では不適切とされている。BRCA1/2変異保因者は中間期癌の発症率が高い。予防的乳房切除より経過観察を選択するBRCA変異保因者には、MRIや超音波による精密な検査が望ましいとされてきた。
過去の臨床試験では、マンモグラフィーよりもMRIが家族性乳癌の発見に高い検出感度があり、その結果不要な生検の割合も低下することが示されている。
確定変異または家族歴による乳癌の高リスク女性にとって、MRIは望ましいスクリーニング検査と考えられる。その明確な理由として、若い女性の乳房組織は高密度なためマンモグラフィーによる診断が困難なことが挙げられる。また、早期乳癌に見られるカルシウム欠乏もマンモグラフィーでの検出を困難にしている。検査技術と同様に重要なのは、検査と検査の間隔である。本臨床試験で観察した単独症例よりもはるかに多数の中間期癌を観察したいくつかの臨床試験では、6ヶ月間隔のMRI検査が望ましい検査方法であることを認めている。
今回の臨床試験は、BRCA1/2変異保因者に対しマンモグラフィーのみによるスクリーニング検査と比較して、これにMRIを追加した場合の費用対効果を評価する目的で実施された。異なるスクリーニング計画における健康面の成果および費用を、統計モデルにより評価した。この計画は、スクリーニングの無い場合、25~69歳に対し年1回のマンモグラフィー検査を実施する場合、および25~69歳に対し年1回のマンモグラフィー検査に追加し、特定の年齢群に年1回のMRIを実施する場合が想定された。
- 25~69歳の全女性対象にマンモグラフィーに年1回のMRIを追加すると、乳癌検出結果は増加したが偽陽性の結果もまた増加した。
- BRCA1変異保因者について乳腫瘍検出率は、マンモグラフィー単独の場合で35%だったのに対し、MRIを追加した場合85%であった。
- 乳癌が発現していないBRCA1変異保因者のうち、検査結果で誤って陽性と判定されたのは、マンモグラフィー単独では僅か4%であったのに対し、マンモグラフィーにMRI追加では23%であった。
- BRCA2変異保因者の場合でも概して同様であった。
- マンモグラフィーにMRIを追加した場合、BRCA1変異保因者で平均寿命が71.9歳から73.3歳に、BRCA2変異保因者で78.8歳から79.6歳に延びた。
異なる年齢群を分析したところ、概して35~54歳の女性ではマンモグラフィーにMRIを追加した場合、非常に明確な費用対効果が見られた。この年齢群において、BRCA1保因者全て、およびBRCA2保因者でマンモグラフィー上乳房組織が高密度な女性に対し、MRI追加による費用対効果が認められた。
研究者らは、マンモグラフィーにMRIを追加した乳癌スクリーニング検査は特定年齢群のBRCA1/2変異保因者にとって費用対効果の可能性がある、と結論づけた。彼らは、「MRIによる乳房スクリーニング検査の医療費が大幅に削減されれば、より幅広いグループの女性にとって受け入れ可能な価値のある検査になるだろう。」と述べている。
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