早期の専門医受診により生殖機能の維持が改善

キャンサーコンサルタンツ
2010年10月12日

若年期の乳癌女性では、手術を受けてから不妊治療専門医に受診するよりも、専門医に受診してから手術を受けたほうが、早期に生殖機能維持の治療を受けられ、また化学療法の開始も早いことがわかった。この研究結果は最近Journal of Clinical Oncology誌に発表された。[1]

若年期の乳癌女性では、癌治療がどの程度生殖機能に影響するのかを常に考慮しなければならない。多くの女性にとっての朗報は、このテーマに関する研究は増加していることであり、癌治療に専念しつつ生殖機能が維持できるようになった。

乳癌(化学療法)では、治療時の年齢や乳癌の種類、治療期間の長さなどさまざまな要因によって妊娠できない状況となる。化学療法によって永久に不妊になる場合もあれば一時的な場合もある。乳癌治療で不妊に至る可能性がある場合は、患者にその可能性を知らせ、生殖機能を維持するかどうかについて決めてもらうことが重要である。

米国臨床腫瘍学会のガイドラインでは、若年の乳癌患者が適切な時期に専門医に受診し生殖機能の維持に取り組むことを推奨している。このガイドラインは専門家の意見にもとづいている。最近、このガイドラインの推奨を実証する試験が実施された。

93人の若い女性患者において、早期に不妊治療専門医にかかった場合、生殖機能維持の治療または癌治療のタイミングに影響があるか否かについて調査された。女性は全員早期乳癌で、卵母細胞や胚の冷凍保存するために排卵誘発剤が投与された。患者の平均年齢は35歳であった。35人は不妊治療専門医に受診してから乳癌の手術を受け、58人は手術を受けた後に専門医に受診した。

不妊治療専門医に受診してから手術を受けた患者は、癌の診断から不妊治療を受けるまでの期間が有意に短く、また診断から化学療法を始めるまでの期間も短かった。さらに、不妊治療専門医に受診してから手術を受けた患者の多くで、生殖機能を保持するための処置を2回行うことができ、結果として手術後に専門医に受診した群よりも有意にたくさんの卵母細胞や胚が保存できたのである。

若い女性癌患者は、癌治療で生殖機能にどのような影響があるのか、また生殖機能を維持するためにはどうしたらいいのかをできれば医師に相談したいはずだ。腫瘍専門医の多くが患者と生殖機能の維持についていつも話し合っていると報告しているものの、必ずしも教育的な資料を提供したり、専門医を紹介したりしているわけではないのかもしれない。[2]

参考文献:

[1] Lee S, Ozkavukcu S, Heytens E, Moy F and Oktay K. Value of early referral to fertility preservation in young women with breast cancer. Journal of Clinical Oncology [early online publication]. September 17, 2010.
[2] Quinn G, Vadaparampil ST, Jacobsen P, et al. National survey of physicians practice patterns: Fertility preservation and cancer patients. Presented at the 2009 annual meeting of the American Society of Clinical Oncology, May 29-June 2, 2009, Orlando, FL. Abstract CRA9508.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 松長愛美

監修 大渕俊朗(呼吸器・乳腺内分泌・小児外科/福岡大学医学部)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

乳がんリスク評価ツールの仕組みの画像

乳がんリスク評価ツールの仕組み

2024年3月、女優のオリヴィア・マン(Olivia Munn)が乳がんと診断されたことを発表した。Munnさんはまた、がんリスク評価ツールが彼女の診断に至る過程で果たした役割を強調し...
ハイリスク遺伝子を有する若年乳がんサバイバーの生殖補助医療は安全の画像

ハイリスク遺伝子を有する若年乳がんサバイバーの生殖補助医療は安全

ハイリスク遺伝子があり、乳がん後に妊娠した若い女性を対象とした初の世界的研究によれば、生殖補助医療(ART)は安全であり、乳がん再発リスクは上昇しないハイリスク遺伝子があり、乳...
【ASCO2024年次総会】T-DXd(エンハーツ)がホルモン療法歴のある乳がん患者の無増悪生存期間を有意に改善の画像

【ASCO2024年次総会】T-DXd(エンハーツ)がホルモン療法歴のある乳がん患者の無増悪生存期間を有意に改善

ASCOの見解(引用)「抗体薬物複合体(ADC)は、乳がん治療において有望で有益な分野であり、治療パラダイムにおける役割はますます大きくなっています。トラスツズマブ デルクステ...
【ASCO2024年次総会】若年乳がん患者のほとんどが治療後に妊娠・出産可能の画像

【ASCO2024年次総会】若年乳がん患者のほとんどが治療後に妊娠・出産可能

ASCOの見解(引用)「乳がんの治療後も、妊娠や出産が可能であるだけでなく安全でもあることが、データが進化するにつれて次々と証明されてきています。この研究では、妊娠を試みた乳が...