乳癌メトロノーム化学療法(休眠療法、低容量持続化学療法)/術前持続化学療法で局所進行乳癌の組織学的完全奏効率が高まる

キャンサーコンサルタンツ
2006年6月

ランダム化,多施設,第3相試験の結果から、アドリアマイシン®(ドキソルビシン)、シクロホスファミド、タキソール®(パクリタキセル)などの術前持続化学療法では、標準的な間欠投与と比較して、局所進行乳癌患者(特にエストロゲンレセプター陰性腫瘍を伴う患者)において組織学的完全奏効(pCR)率が有意に高まることが示唆された。これらの結果は、米国臨床腫瘍学会 (ASCO)の第42回年次会議における最新版抄録(late-breaking abstract)にて公表された。

 アドリアマイシン、シクロホスファミドおよびパクリタキセル(AC-P)の持続的(メトロノーム)投与は、乳癌患者に対する術前および補助的な治療において良好な結果をもたらす。メトロノーム投与により、長期の無投与期間もなく低用量での投与が可能となる。基礎研究で、メトロノーム投与が治療によるアポトーシス効果を高める可能性が示され、この方法の有効性について評価するための試験が継続されている。

 Southwest Oncology Group (SWOG)と提携している研究者らは、ランダム化,多施設,第3相試験を実施し、局所進行乳癌または炎症性乳癌の女性患者を対象とした術前療法として、AC-Pのメトロノーム投与と標準的な間欠投与とを比較した。この試験では265名を登録し、メトロノーム投与群(アドリアマイシン 24mg/m2/週、シクロホスファミド 60mg/m2/日、G-CSF 6日/週、-15週間、毎週)または標準的な間欠投与群(アドリアマイシン 60mg/m2、シクロホスファミド 600mg/m2、-5サイクル、3週間毎に静脈内投与)にランダムに割付けた。両群の患者に対し、引き続きタキソール(80mg/m2/週)を12週にわたって投与した後、手術を実施した。本試験の主要評価項目は、原発部位のpCR率であり、National Adjuvant Surgical Breast and Bowel Project(NASBP)基準で評価した。

表1:局所進行乳癌に対するメトロノーム投与対標準投与

患者集団

メトロノーム投与

標準投与

コホート全体

原発部位のpCR率 31%

原発部位のpCR率 19%

ER-陽性癌

原発部位のpCR率 14%

原発部位のpCR率 9%

ER-陰性癌

原発部位のpCR率 43%

原発部位のpCR率 26%

炎症性乳癌

原発部位のpCR率 32%

原発部位のpCR率 12%

局所進行乳癌全体

原発部位のpCR率 25%

原発部位のpCR率 20%

pCR患者

リンパ節転移陰性状態の達成率 92%

リンパ節転移陰性状態の達成率 83%

コホート全体

リンパ節転移陰性状態の達成率 26%

リンパ節転移陰性状態の達成率 15%

コホート全体

グレード3~4の好中球減少症16%、発熱性好中球減少症1%

グレード3~4の好中球減少症47%、発熱性好中球減少症2%

コホート全体

グレード3~4の悪心/嘔吐 5%

グレード3~4の悪心/嘔吐 11%

コホート全体

グレード3~4の手足症候群 13%

グレード3~4の手足症候群 0%

コホート全体

グレード3~4の口内炎 11%

グレード3~4の口内炎 2%

研究者らは、G-CSF を併用したAC-Tのメトロノーム投与では、標準的な間欠投与と比較して、局所進行乳癌患者(特にエストロゲンレセプター(ER)陰性腫瘍および炎症性乳癌を伴う患者)においてpCR率が有意に改善されると結論付けた。また、リンパ節でのpCR率もメトロノーム投与で改善された。治療に関連する死亡は認められなかった。長期にわたって追跡調査をすることにより、再発率が別の投与計画に影響を受けるか否かを判断できるであろう。

参考文献

Ellis GK, Barlow WE, Russell CA, et al. SWOG 0012, a Randomized Phase III Comparison of Standard Doxorubicin and Cyclophosphamide Followed by Weekly  Paclitaxel Versus Weekly Doxorubicin and Daily Oral Cyclophosphamide plus G-CSF Followed by Weekly Paclitaxel as Neoadjuvant Therapy for Inflammatory and Locally Advanced Breast Cancer. Proceedings from the 42nd Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology. Atlanta, Ga.June 2006. Abstract # LBA537.


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翻訳担当者 齊藤 芳子

監修 瀬戸山 修(薬学)

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