デノスマブはゾメタより骨合併症を遅らせる効果が高い

キャンサーコンサルタンツ

多発性骨髄腫患者あるいは乳癌、前立腺癌または他の固形腫瘍からの骨転移を有する患者において、デノスマブはゾメタ(ゾレドロン酸)より骨折などの骨合併症の発症を遅らせるあるいは防ぐ効果が高かった。第3相臨床試験の統合解析結果は、第35回欧州臨床腫瘍学会(ESMO)にて発表された。

転移癌とは体内の遠隔部位へと拡散した癌のことを言う。乳癌および前立腺癌など数種の癌は骨に拡散する傾向がある。骨転移は骨折および脊髄圧迫のような重篤な問題につながる可能性があり、手術あるいは放射線治療を必要とする場合がある。

多発性骨髄腫では形質細胞が骨髄に浸潤し、体内全ての大型の骨の内腔に広がっている。多発性骨髄腫患者の大半で、骨溶解性病変といわれ骨が脆弱化し骨折の原因とされる複数の空洞が形成される。

ゾメタはビスフォスフォネート製剤であり、骨転移あるいは多発性骨髄腫による骨合併症のリスクを軽減するために一般的に用いられている。だが、研究者らは治療のため新たなるアプローチの探求を続けている。

デノスマブはRANKリガンドとして知られるタンパク質を標的とする。本タンパク質は破骨細胞(骨を破壊する細胞)の活動を調整する。デノスマブは閉経後骨粗鬆症の治療薬として認可されており、骨転移および治療に関連する骨減少の管理において有望な結果も示してきた。

現在の分析は、骨転移あるいは多発性骨髄腫を有する患者間でデノスマブとゾメタの直接比較を行った3件の第3相臨床試験から得られた情報に基づいている[1]。その試験には総計で5700名以上が登録した。その試験では骨折、骨への放射線照射、骨の手術および脊髄圧迫など骨合併症の頻度とタイミングを評価した。

・デノスマブ治療を受けた患者では、ゾメタ治療患者より骨合併症が認められない期間が長かった。試験中骨合併症が最初に見られた中央値は、デノスマブ治療患者27.7カ月に対しゾメタ治療患者においては19.5カ月だった。

・全生存率および癌進行までの期間はゾメタによる治療患者、デノスマブ治療患者とも同等であった。

・顎骨壊死(まれであるものの重篤な副作用)がデノスマブ患者の1.8%、ゾメタ患者の1.3%でみられた。試験群間の相違は統計学的に有意ではなく、偶然生じたものと思われる。

第3相臨床試験の個別の解析では、研究者らは、デノスマブはゾメタより疼痛の悪化を大幅に遅らせると報告した[2]。

これらの結果は、デノスマブはゾメタより骨転移あるいは多発性骨髄腫患者において骨合併症を遅らせるあるいは防ぐ上で有効であるかもしれないと示唆している。

参考文献:

[1] Lipton A, Siena S, Rader M et al. Comparison of denosumab versus zoledronic acid (ZA) for treatment of bone metastases in advanced cancer patients: An integrated analysis of 3 pivotal trials. Presented at the 35th European Society for Medical Oncology (ESMO) Congress, Milan, Italy, October 8-12, 2010. Abstract 1249P.

[2] Cleeland CS, Patrick DL, Fallowfield L et al. Effects of denosumab vs zoledronic acid (ZA) on pain in patients (pts) with advanced cancer and bone metastases: An integrated analysis of 3 pivotal trials. Presented at the 35th European Society for Medical Oncology (ESMO) Congress, Milan, Italy, October 8-12, 2010. Abstract 1248P.


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翻訳担当者 滝川 俊和

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

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