Iniparib(イニパリブ)はトリプルネガティブの転移乳癌治療に有望

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試験的薬剤であるイニパリブと化学療法を併用した治療は、化学療法のみによる治療と比較した場合、トリプルネガティブの転移性乳癌の女性に対して、約5カ月間の延命効果があることが判明した。この結果は第35回European Society for Medical Oncology (ESMO) Congressにて発表された。

乳癌の中でも、エストロゲン受容体陰性、プロゲステロン受容体陰性、HER2陰性のものは、トリプルネガティブの乳癌と呼ばれ、他の乳癌に比べ、より侵襲性が高い傾向があり、治療においても手立てが少ない。

イニパリブはPARP阻害剤と呼ばれる医薬品に分類される。PARP酵素は、化学療法による損傷DNAの修復を含め、DNA修復の段階において活性を示す。この酵素を阻害する薬剤は癌細胞の死滅や化学療法に対する感受性を上げることに効果を発揮すると考えられる。イニパリブは現在、トリプルネガティブ乳癌を含め特定種の乳癌に対して臨床試験の段階であり、また、扁平上皮細胞・非小細胞肺癌や、膵臓癌、卵巣癌、脳腫瘍で薬効試験が行われている。

第2相臨床試験に携わっている研究者は、過去2種類の治療法を受けたことのある、トリプルネガティブの転移乳癌女性123人について調査した。参加者を2つの治療グループに分け、一つ目のグループはジェムザール(ゲムシタビン)とカルボプラチンの化学療法にイニパリブを併用し、もう一つのグループは化学療法のみによる治療を受けた。

化学療法のみによる治療に比べると、化学療法にイニパリブを併用して治療を受けた患者では、全生存期間が約5カ月改善された。それぞれ7.7カ月と12.3カ月であった。
イニパリブを処方されている女性の内、半数以上(55.7%)が臨床的に有効(少なくとも6ヶ月間以上の、完全または部分的な奏効または病状の安定)であったが、化学療法のみでは、33.9% が有効であった。
副作用については、両グループとも同様であった。

「トリプルネガティブの転移性乳癌の患者に対して、現状では治療の手立てに限界があるが、これらのデータから、イニパリブが新しい治療として有望であることが示唆される」と調査担当研究者の一人が結論づけた。イニパリブに関する問題はまだ残っており、現在実行中の臨床試験で研究されていると、研究者らは付け加えた。最も関心が高いものは、どの化学療法剤をイニパリブと併用すると最も効果的かを決定することにある。

参考文献:

O’Shaughnessy J, et al. Iniparib extends overall survival in metastatic triple-negative breast cancer: final Phase-II results. Presented at the 35th European Society for Medical Oncology (ESMO) Congress, Milan, Italy, October 8-12, 2010. Abstract LBA11.


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翻訳担当者 峯野知子

監修 林 正樹(血液・腫瘍内科)

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