OncotypeDX™ が効果的な乳癌治療を方向づける

キャンサーコンサルタンツ
2007年4月

ロチェスター大学、アルバニー薬科大学、スタンフォード大学の研究者らは、リンパ節転移が陰性で、エストロゲン受容体が陽性である限局性乳癌女性の治療法決定にOctotypeDX™検査を使用することが、結果的に良好な転帰と、許容範囲のコストになることを報告している。この試験の詳細はCancer誌2007年3月15日号に掲載された。

リンパ節転移が陰性の初期乳癌患者である女性の多くに化学療法は推奨されているが、化学療法の効果は個人により異なる。化学療法がもっとも有益であろう女性を事前に判別することによって個別化された治療が可能となる。この判別によって、化学療法での効果が見込めない女性が毒性作用を避けることが可能となる。

OctotypeDX™は、癌と新たに診断された、ステージ1または2で、リンパ節への転移が陰性、エストロゲン受容体陽性の限局性乳癌患者に、ホルモン療法に術後化学療法を併用することが有益かを判断するのに有効とされるゲノムテストである。OncotypeDX™は診断後10年間の、患者の抱えている再発リスクを予測する。OncotypeDX™は患者の癌から採取した検体中の21種類の遺伝子の活性を評価して、当該患者の再発スコアを判定する。再発スコアは0から100の範囲で、より高いスコアは、より高い再発のリスクをあらわす。

リンパ節転移が陰性で、エストロゲン受容体陽性である乳癌の治療方法を導くためのOncotypeDX™使用で見込まれる結果とコストを評価するために、研究者らは3通りの治療アプローチの比較を行った。

1)タモキシフェンのみでの治療 
2)タモキシフェンと化学療法による治療 
3)OncotypeDX™再発スコアをガイドとする治療

再発スコアガイド下によるアプローチでは、低リスク女性はタモキシフェンのみによる治療、そして中間リスクおよび高リスク女性はタモキシフェンと化学療法による治療が行われるものとした。

タモキシフェンのみの治療と比較すると、再発スコアによる治療アプローチは、推定寿命はより長かった。しかしながら(許容範囲ではあるが)費用も高い。

タモキシフェンと化学療法を併用した治療と比較すると、再発スコアによる治療アプローチは推定寿命は近似しており、低費用でもあった。

この試験は、初期段階のエストロゲン受容体が陽性の乳癌女性が個別化した治療決定をするためにOncotypeDX™検査を行うことにより、良好な成果を、許容範囲の費用で実現できる可能性が高いことを示している。

コメント

乳癌マネージメントでのOncotypeDX™検査はTAILORxとして知られている臨床試験によって更に進んだ研究が行われている。詳細は以下http://www.cancer.gov/clinicaltrials/digestpage/TAILORx

参考文献

Lyman GH, Cosler LE, Kuderer NM, Hornberger J. Impact of a 21-gene RT-PCR assay on treatment decisions in early-stage breast cancer:An economic analysis based on prognostic and predictive validation studies. Cancer. 2007;109:1011-8.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 下和田 篤子

監修 林 正樹(血液・腫瘍医)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

転移トリネガ乳がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の効果予測ツールを開発の画像

転移トリネガ乳がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の効果予測ツールを開発

ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターおよびジョンズホプキンス大学医学部の研究者らは、転移を有するトリプルネガティブ乳がんにおいて、免疫療法薬の効果が期待できる患者をコンピュータツ...
FDAが高リスク早期乳がんに対し、Kisqaliとアロマターゼ阻害剤併用およびKisqali Femara Co-Packを承認の画像

FDAが高リスク早期乳がんに対し、Kisqaliとアロマターゼ阻害剤併用およびKisqali Femara Co-Packを承認

米国食品医薬品局(FDA)2024年9月17日、米国食品医薬品局(FDA)は、ホルモン受容体(HR)陽性、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性の再発リスクの高いステージIIおよびI...
乳がん後の母乳育児が安全であることを証明する初めての研究結果の画像

乳がん後の母乳育児が安全であることを証明する初めての研究結果

● 欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2024で発表された2つの国際的な研究により、乳がん治療後に母乳育児をした女性において、再発や新たな乳がんの増加はないことが示された。
● この結果は、乳...
HER2陽性乳がんの脳転移にトラスツズマブ デルクステカン(抗体薬物複合体)が有効の画像

HER2陽性乳がんの脳転移にトラスツズマブ デルクステカン(抗体薬物複合体)が有効

• 大規模な国際共同臨床試験において、トラスツズマブ デルクステカンは、HER2陽性乳がん患者の脳転移に対して優れた抗がん作用を示した。
• 今回の結果は、今まで行われてきた複数の小規模...