アスピリンの長期使用が癌のリスクをやや減少させる

キャンサーコンサルタンツ

2007年4月

アメリカ癌協会(American Cancer Society)の研究者らは、成人用アスピリンの連日・長期服用が結腸直腸癌、前立腺癌、乳癌の全体的な発生率を下げているようだと報告した。この研究の詳細は2007年4月18日号のJournal of the National Cancer Institute誌に掲載された。

過去の研究結果でも、抗炎症剤の長期使用はある種の癌予防になるかもしれないと指摘されてきた。米国内の高い癌罹患率のため、癌の予防だけでなく癌のリスクを減らすことも含め可能性のある方法を見いだすことに研究努力を傾けてきた。研究者たちは、抗炎症剤と癌発生率の関係性・リスクについての調査を続けている。

アメリカ癌協会の研究者らは、最近、Cancer Prevention Study Ⅱ Nutrition Cohort(CPS-Ⅱ:癌予防研究Ⅱ栄養コホート)に参加した人々のデータを検討した。この研究には1992年~1993年の間に登録した7000人近くの男性、7600人以上の女性が参加した。アスピリン使用は、10種類の癌発症率及び、すべての癌の発症率とともに集計された。

5年もしくはそれ以上成人用アスピリンを服用していた人は、まったく使用していなかった人に比べ、男性では癌になるリスクが16%減少し、女性では同様に14%減少した。

成人用アスピリンの連日使用は、男女合わせて結腸直腸癌になるリスクが32%減少し、男性では前立腺癌になるリスクが19%、女性では乳癌になるリスクが17%低下した。

研究者らは「成人用アスピリンの長期連日服用は、結腸直腸癌・前立腺癌・乳癌が発症しやすい集団において癌全体の発生率をやや低下させることに関連があるかもしれない。」と結論づけている。アスピリンはそれ自体に危険性を含んでおり、また、すべてに人に使えるものではない。そのためアスピリンから受ける恩恵とリスクについては、それぞれがかかりつけ医に相談をすべきである。

コメント:

アスピリンの長期使用が結腸直腸癌やその他の癌の発生率を低下させるという報告が増えているが、アスピリンの予防的服用は認められていない。最近の米国予防サービス・ガイドラインでは、高容量の長期アスピリン服用の危険性はわかっていないと警告している(関連記事省略)。結腸直腸癌予防のためのアスピリン長期服用は薦められていない。現時点では、患者はアスピリンの長期連日服用の潜在的利益について理解しておくべきだ。

参考文献:

Jacobs E, Thun M, Bain E, et al. A large cohort study of long-term daily use of adult-strength aspirin and cancer incidence. Journal of the National CancerInstitute. 2007; 99: 608-615.


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翻訳担当者 根本 明日香

監修 林 正樹(血液・腫瘍医)

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