デノスマブはアロマターゼ阻害剤による骨量減少の治療に有効
キャンサーコンサルタンツ
2007年12月
完全ヒトモノクローナル抗体であるデノスマブ〔denosumab〕(アムジェン社)はアロマターゼ阻害剤で長期にわたって治療を受けた非転移性乳癌患者の骨密度を着実に増加させると米国およびカナダの研究者らは報告した。この結果は2007年サンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)で発表された。
アロマターゼ阻害剤はホルモン受容体陽性乳癌患者の治療によく使われるようになってきており、ノルバデックス(タモキシフェン)よりも延命効果あるが、骨量減少と骨折リスクの増大という懸念もある。ビスフォスフォネートはアロマターゼ阻害剤で治療している患者の骨量減少を予防あるいは抑制すると評価されているが、静注する必要があり、また顎の骨の壊死だけでなく、腎臓の合併症を引き起こす可能性もある。
デノスマブは完全ヒト化モノクローナル抗体で、NF-κB活性化受容体リガンド(RANKL:骨リモデリングにおける骨吸収の重要なメディエーター)を特異的な標的としたものである。デノスマブは骨粗しょう症、治療誘導性骨量減少、リューマチ性関節炎、骨転移、多発性骨髄腫など様々な病気で試験中である。2006年2月23日発行のNew England Journal of Medicine誌に掲載された過去の研究で骨量の少ない閉経後の女性にデノスマブを3ヶ月あるいは6ヶ月ごとに12ヶ月に渡って皮下投与すると骨密度は増加し、骨吸収が減少した。本試験に参加した412例の女性をデノスマブ投与群、アレンドロネート(フォサマックス)投与群、あるいはプラセボ投与群に無作為に割り付けた。デノスマブ群は骨密度の増加に関しては、少なくともアレンドロネートと同等の効果が観察され、いくつかの測定値ではアレンドロネートを上回る効果がみられた。乳癌骨転移が見られる女性患者を対象にした無作為化第2相試験では、骨代謝の抑制および骨関連事象の減少に関して、デノスマブの皮下投与は静注ビスフォスフォネートと同程度の効果があった。本試験に参加した患者(n=255)にはデノスマブの投与量を5段階にわけたうちの一つか、あるいは静注でビスフォスフォネートを投与した。
デノスマブの骨密度への効果をさらに評価するために、アロマターゼ阻害剤で治療をしている非転移性乳癌女性患者を対象にランダム化二重盲検プラセボ対照臨床第3相試験を実施した。本試験にはアロマターゼ阻害剤で治療を受けている252例の女性が参加し、臨床試験開始時に骨量減少のエビデンスがあった。参加者に骨粗しょう症のエビデンスのある参加者はいなかったが、一日に1,000mgのカルシウムと少なくとも400IUのビタミンDのサプリメントの摂取を指導された。試験期間は24ヶ月であった。
24ヶ月の試験期間を通して、デノスマブの投与を受けていた患者の骨密度は、海綿骨および皮質骨で確実に増加した。
デノスマブ投与群の患者は腰椎の骨密度が1年で5.5%、2年で7.6%まで増加した。腰部全体および橈骨(とうこつ)遠位の骨密度測定値も同様に増加した。
デノスマブに関連する有害事象はプラセボ群のものと類似していた。
研究者らはアロマターゼ阻害剤で治療している非転移性乳癌患者に発現する骨量減少にデノスマブは非常に有効であると考えられるという結論を出した。デノスマブはプラセボ群と比較して骨量減少を阻止するだけでなく、試験開始時に骨量減少のエビデンスのあった女性患者の骨密度を増加させた。研究者らはデノスマブをさらに評価するために計画された臨床試験(8,000例の女性患者の登録が望ましい)の結果を待ち望んでいる。
コメント:
デノスマブは様々な疾病による骨量減少の治療と予防における大きな進歩を示すものと考えられる。
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