乳房温存療法は若年の乳癌女性に効果的

キャンサーコンサルタンツ

乳癌温存療法(乳腺腫瘍摘出術+放射線治療)は若年の初期ステージ乳癌女性において乳房切除術と同様に効果的であるということが、2011年乳癌シンポジウムで発表された2つの研究により証明されている。

初期ステージ乳癌の手術には、乳房切除術または乳腺腫瘍摘出術がある。乳房切除術では乳房全体を除去するが、乳腺腫瘍摘出術では癌およびその周辺組織を除去する。乳腺腫瘍摘出術後は、乳房内または乳房付近の癌再発のリスクを減少させるため、通常、放射線治療が行われる。乳腺腫瘍摘出術および放射線治療の併用を乳房温存療法という。

初期ステージ乳癌女性において、乳房切除術および乳房温存療法で同様の長期生存率が得られることが研究により明らかになった。しかし、若年女性では乳房温存療法後の乳癌再発のリスクが、高齢女性より高くなる可能性があると示唆する研究者もいる。若年女性で乳房切除術の利用が増加しているのは、再発リスクに関する懸念が一因となっている可能性がある。

2011年乳癌シンポジウムで発表予定の2つの研究では、若年の乳癌女性で手術の種類が転帰に影響を与えるかどうかを検討する。最初の研究には、マサチューセッツ総合病院で初期ステージ乳癌の治療を受けた40歳以下の女性628人が参加した。[1]

局所的な乳癌再発(乳房内または乳房付近の再発)のリスクは、手術の種類によって大きく異なることはなかった。術後5年までの局所的な乳癌再発のリスクは、乳房温存療法を受けた女性で4.6%、乳房切除術を受けた女性で8.5%であった。術後10年までの同リスクは乳房温存療法を受けた女性で13.3%、乳房切除術を受けた女性で10.8%であった。

二番目の研究では、40歳未満の乳癌患者14,000人以上に関する大規模な国民データベースから情報を収集した。[2]患者および腫瘍の特性を考慮すると、乳房温存療法および乳房切除術は同等の全生存率をもたらした。10年全生存率は、乳房温存療法を受けた女性で83.5%、乳房切除術を受けた女性で83.6%であった。

同時に、若年の初期ステージ乳癌女性において、乳房切除術および乳房温存療法は同様の転帰をもたらすことが、これらの研究により示唆されている。若年女性は、このような情報を踏まえて乳癌治療法を決定するといいでしょう。

参考文献:
[1] Buckley JM, Coopey S, Samphao S et al. Recurrence rates and long-term survival in women diagnosed with breast cancer at age 40 and younger. Paper presented at: 2011 Breast Cancer Symposium; September 8-10, 2011; San Francisco, CA. Abstract 70.
[2] Mahmood U, Morris CG, Neuner GA et al. Equivalent survival with breast-conservation therapy or mastectomy in the management of young women with early-stage breast cancer. Paper presented at: 2011 Breast Cancer Symposium; September 8-10, 2011; San Francisco, CA. Abstract 85.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 可部真知子

監修 野長瀬祥兼 (農学/医学)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

乳がんリスク評価ツールの仕組みの画像

乳がんリスク評価ツールの仕組み

2024年3月、女優のオリヴィア・マン(Olivia Munn)が乳がんと診断されたことを発表した。Munnさんはまた、がんリスク評価ツールが彼女の診断に至る過程で果たした役割を強調し...
ハイリスク遺伝子を有する若年乳がんサバイバーの生殖補助医療は安全の画像

ハイリスク遺伝子を有する若年乳がんサバイバーの生殖補助医療は安全

ハイリスク遺伝子があり、乳がん後に妊娠した若い女性を対象とした初の世界的研究によれば、生殖補助医療(ART)は安全であり、乳がん再発リスクは上昇しないハイリスク遺伝子があり、乳...
【ASCO2024年次総会】T-DXd(エンハーツ)がホルモン療法歴のある乳がん患者の無増悪生存期間を有意に改善の画像

【ASCO2024年次総会】T-DXd(エンハーツ)がホルモン療法歴のある乳がん患者の無増悪生存期間を有意に改善

ASCOの見解(引用)「抗体薬物複合体(ADC)は、乳がん治療において有望で有益な分野であり、治療パラダイムにおける役割はますます大きくなっています。トラスツズマブ デルクステ...
【ASCO2024年次総会】若年乳がん患者のほとんどが治療後に妊娠・出産可能の画像

【ASCO2024年次総会】若年乳がん患者のほとんどが治療後に妊娠・出産可能

ASCOの見解(引用)「乳がんの治療後も、妊娠や出産が可能であるだけでなく安全でもあることが、データが進化するにつれて次々と証明されてきています。この研究では、妊娠を試みた乳が...