FDAがアバスチンの添付文書から乳癌への適応取り下げへ
FOR IMMEDIATE RELEASE:2010年12月16日
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FDAがアバスチンの添付文書から乳癌への適応取り下げへ
−乳癌患者における薬剤の安全性および有効性が示されない結果となる−
米国食品医薬品局(FDA)は、アバスチン(ベバシズマブ)の乳癌治療における安全性および有効性が示されなかったことから、この薬剤の添付文書から乳癌適応を取り下げるよう勧めていると公表した。
FDAによる今回の推奨は、乳癌女性を対象としたアバスチンの4つの臨床試験結果の審議によるもので、アバスチンが乳癌患者の全生存期間を延長することなく、また疾患進行の遅延においても患者への重大なリスクを上回るだけの有益性が得られないとのデータに基づく決定であった。リスクは、重度の高血圧、出血、鼻部や胃および腸管などの穿孔(穴があくこと)の発現、心臓発作または心不全であった。
2010年7月、主に腫瘍医からなるFDA諮問委員会は、あらゆるデータの審査の結果、アバスチンの添付文書から乳癌適応を取り下げることを12対1で可決した。
「臨床データを慎重に検討した結果、4つの試験から得られたエビデンスに基づき、アバスチンの乳癌への適応を取り下げることが推奨される。初回試験で確認された有益性は、後続の試験において確認されていない。いずれの試験においても、アバスチン投与を受けた患者の延命効果は認められておらず、またそのような患者において重篤な副作用の頻度が有意に高かった。アバスチンの限定的な効果と重大なリスクを合わせて考慮した結果、この困難な決断を下した。これらの試験結果は期待外れに終わった。この薬剤から効果が期待できる選ばれた患者群が存在するかどうかを確認するために、われわれは製薬会社に対し追加試験を実施するよう働きかけている」と、FDA医薬品評価センター長のJanet Woodcock医師は述べた。
アバスチンの添付文書から乳癌適応を取り下げることは一連の過程にすぎない。これはその第一歩である。アバスチンの市場からの撤退は行われておらず、今回の措置によっても乳癌治療におけるこの薬剤の使用には直接の影響は見込まれていない。この措置により、大腸癌、腎臓癌、脳腫瘍、および肺癌に対する承認に影響を与えることはない。
転移性乳癌患者にアバスチンによる治療を現在行っている腫瘍医は、その治療を継続するのか、あるいは他の治療選択肢を考慮するのか医学的判断に基づいて決定すべきである。
FDAはアバスチンの製薬会社であるジェネンテック社に対し、乳癌に対するアバスチンの製造販売の承認撤回についての提言を伝えた。ジェネンテック社は乳癌の適応を自発的に取り下げることに同意しておらず、FDAはNotice of Opportunity for a Hearing(NOOH)を発令したが、それによりジェネンテック社がFDAの決定に異議を唱える場合は公聴会の開催を要請することができる。ジェネンテック社は15日以内に聴聞の要請を行うか、あるいは要請を行わない場合は聴聞の機会を放棄したものとみなされ、FDAによる乳癌適応の取り下げが開始される。
アバスチンは化学療法剤(パクリタキセル)との併用で、2008年2月にFDAの迅速承認制度のもとに承認されたが、それは転移性HER2陰性乳癌に対する化学療法を受けていない患者において、アバスチンの評価を行った「E2100」として知られている臨床試験の結果に基づくものであった。迅速承認制度では、薬剤の重要な臨床的有効性を示す臨床データに基づいて承認が行われるが、この確定には追加的情報が必要とされる。この制度により患者は、確認臨床試験が実施されている間、重篤あるいは生命にかかわる疾患の治療として有望な新薬を早期に利用できるようになる。
アバスチンの乳癌に対する迅速承認後、ジェネンテック社は追加的な臨床試験を実施し、その試験データをFDAへ提出した。このデータによると、全生存期間の改善あるいはリスクを上回る患者への臨床的有効性のエビデンスは示されておらず、「無増悪生存期間」においてわずかな効果が示されたのみに過ぎなかった。「無増悪生存期間」のわずかな延長は、腫瘍増殖の遅延におけるわずかな一時的効果を意味する。
またアバスチンは、重篤あるいは生命にかかわる副作用とも関連がある。それらの副作用には、脳卒中、創傷治癒合併症、臓器障害または臓器不全、および高血圧や頭痛、錯乱、発作、脳の肥大による視力喪失を特徴とする可逆性後白質脳症症候群(RPLS)と呼ばれる神経学的疾患の発現がある。
転移性乳癌治療におけるアバスチンの使用に関連するすべてのデータに基づき、FDAはこの薬剤のリスクは有益性を上回ると決定した。
FDAは、アバスチンの有益性がリスクを上回る患者集団を特定するために、転移性乳癌患者を対象とする追加的な試験を実施するいかなる提言についても、ジェネンテック社と共に取り組む意向を示している。
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栃木 和美 訳
原 文堅 (乳腺/四国がんセンター)監修
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