2007/05/29号◆スポットライト「癌治療後のリンパ浮腫-どれくらい深刻か?」
同号原文|
NCI Cancer Bulletin2007年5月29日号(Volume 4 / Number 18)
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◇◆◇スポットライト◇◆◇
癌治療後のリンパ浮腫-どれくらい深刻か?
癌から生還した人の多くが、リンパ浮腫として知られる治療による重篤な副作用に苦しむことになるが、患者がそのことについて知らない場合も多い。
リンパ系とは血管と全身を循環するリンパ液(栄養とともに細胞を浸し、老廃物や感染を取り除くのに役立つ体液)を濾過する(リンパ)節との非常に優れたネットワークで構成される。リンパ浮腫はこのリンパ系の一部が遮断されたとき、すなわちリンパ節および脈管が除去されるか障害を受けたときに生じ、リンパの「交通渋滞」を引き起こす。
その結果、患者はしばしば、障害が生じた側の遠位四肢または組織に、重量感、倦怠感(だるさ)、および圧迫感として腫脹を報告する。時間の経過とともに腫脹は著しく増大し、永久化する硬化症を伴うことがある。
乳癌治療後のリンパ浮腫の発現率は、6~30パーセントの範囲であると推定される。しかし、リンパ浮腫の定義および重症度はさまざまであること、患者の多くがリンパ浮腫について聞いたことがなく、医学の助けを求めることがないこと、また医療記録によるリンパ浮腫の追跡調査が必要とされていないことなどから、専門家は、発現率は恐らくさらに高くなると認めている。
最近の研究が、この主張を裏付けている。先月『Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention』(癌の疫学・バイオマーカーおよび予防)で発表されたこの種の試験で最大の前向き試験では、乳癌治療を受けた45歳以下の女性の32パーセントの人達が、術後3年間、手や腕に腫脹が持続した。偶発的腫脹の発現率は54パーセントであった。
「リンパ浮腫は少数の女性だけに起こるのではない。程度から言えば重篤といえる治療の帰結である。」と、本試験の主任研究者であるオハイオ州立大学公衆衛生学部および総合がんセンター( College of Public Health and Comprehensive Cancer Center)のElectra Paskett医師は述べている。Paskett医師も、リンパ浮腫を抱えて生活する乳癌生存者である。
「10年前に乳癌と診断されたとき、放射線照射中に手と人差し指に影響する腫脹が発現した。放射線腫瘍医が理学療法士を紹介してくれた。こうして私はリンパ腫について知った」と、Paskett医師は述べている。
乳癌経験者に関するPaskett医師のその後の研究によれば、リンパ浮腫が生活の質を損なう可能性があること、また、リンパ腫が本当に発症した時点では、リンパ浮腫のリスクおよび徴候に関する医師と患者の間のコミュニケーションはわずかしかない。
リンパ浮腫を発症する患者がいる一方で、発症しない患者がいる理由は依然として分かっていない。一般に、切除されたリンパ節数が多いほど、リスクは高くなる。腋窩リンパ節郭清後のリスクは、センチネルリンパ節生検後のリスクよりもはるかに大きい。放射線照射は、肥満、および術後感染とならんで危険因子である。
患者および医師にとって、リンパ浮腫のリスクおよび症状を理解し、それを如何に治療し、いかに改善するかという方法を知る必要性が大きいことは誰もが認めるところである。
「リンパ浮腫の治療にリンパ液排出路を作製しようとしているところである」と、Lymphology Association of North Americaより理学療法士の認定を受けているカリフォルニア州サンディエゴのTammy Mondry医師が述べている。Mondry医師の患者の大半は乳癌経験者であるが、婦人科系癌、前立腺癌、または黒色腫の治療後にリンパ浮腫を発症した患者の割合が大きい。
Mondry医師は、手作業でのリンパ排液(徒手リンパドレナージ)を行って、全身の正常なリンパ管の排出速度を促進する。これは、完全なうっ血緩和療法(Complete Decongestive Therapy、複合的理学療法)と呼ばれる4種類の療法から成る治療法の1つであり、週5日、2~4週間施行する。腫脹がみられる期間が減少するまで、短い弾性包帯による圧迫バンデージを1日24時間装着する。その後、患者は維持のために圧迫帯を毎日装着する。
Mondry医師は、運動、皮膚ケア、および爪ケアと同様、このマッサージを自分で行う方法を指導している。これは、腫脹した四肢でリンパが増大すると、感染のリスクおよび重症度が増加するために重要なことである。
Paskett医師らは、乳癌治療の一貫として、全腋窩リンパ節郭清を受けた女性におけるリンパ浮腫の発現を予防する方法を探り、これらの患者が症状を自覚し、速やかに治療を受けられるようにするための情報を提供する。
「手術後のリンパ浮腫のリスクは決してなくなることはない」ため、そのことを知り、継続的な対応を行うことが非常に重要であると、Paskett医師は説明する。「われわれは主に最初の12~18カ月に発現すると考えているが、時間の経過とともに新しい症例が引き続き認められる」
-Brittany Moya del Pino
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Oyoyo 訳
瀬戸山 修 (薬学) 監修
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