2006/12/05号◆特集記事「SPORE試験がタモキシフェンの使用に関する新しいガイドラインを提示」
同号原文|
米国国立がん研究所(NCI) キャンサーブレティン2006年12月05日号(Volume 3 / Number 47)
____________________
◇ ◆ ◇ 特集記事 ◇ ◆ ◇
SPORE試験がタモキシフェンの使用に関する新しいガイドラインを提示
米国のみで、約50万人の女性が現在、非浸潤および浸潤性の乳癌に対する術後補助療法として、または罹患するリスクの高い人に対する化学予防薬として、タモキシフェンを服用している。
今回、Mayo Clinicで行われた乳癌SPORE (Specialized Program of Research Excellence)試験の試験医師であるMatthew Goetz博士が、本治療薬を服用している女性のうち最大10%においては、タモキシフェンの代謝に関する遺伝的相違により、目的の効果が得られない可能性があることを示した。さらに、薬剤相互作用によって、かなりの割合で治療が不成功に終わるリスクの高い女性がいる可能性がある。
遺伝子多型、および一般的に投与される多くの治療薬(セロトニン再摂取阻害剤など)は、ともにチトクロム(CYP)2D6という酵素の活性に影響を与えうる。国立医学総科学研究所の薬理遺伝学研究ネットワーク(National Institute of General Medical Science’s Pharmacogenetics Research Network)に資金提供を受けたDavid Flockhart博士のグループが、大規模な基礎科学研究と初期の臨床試験を行い、CYP2D6はタモキシフェンを活性化させ、タモキシフェンの治療効果に関与する主たる代謝産物と考えられているendoxifenという分子を産生させることを示した。
「過去30年間の基礎科学の研究により、この酵素が遺伝的に多型であることが知られており、その多型を持つ人々は上記の代謝産物の活性が5分の1しかないと予測されました。」と、インディアナ大学臨床薬理学部門の主任で、SPOREプロジェクトの共同研究者であるFlockhart博士は説明した。
この仮説を試験するために使用されたSPOREのデータは、ノースセントラル癌治療グループによって実施された前方視的ランダム化試験から出てきたものである。その試験では、閉経後の女性が、エストロゲン受容体陽性の乳癌に対する治療として5年間タモキシフェンを投与された。タモキシフェン単剤投与であるコントロール群にランダムに割り付けられた女性180人において、CYP2D6の遺伝子型およびCYP2D6を阻害する薬剤の投与があったことがわかっている。
研究者らは、これらの180人の女性のうち65人を、予測される遺伝的または薬剤誘導性のCYP2D6阻害に基づき、タモキシフェンの代謝能力が低いと分類した。その後、SPORE試験の医師らは、CYP2D6代謝能力が低い患者と、タモキシフェンを正常に代謝すると予測される115人の患者の間で、乳癌の無再発期間、無病生存率および全生存率を比較した。
タモキシフェンの臨床上の効果は、CYP2D6代謝にマイナスに働く要因を持つ女性において、顕著に低かった。そのような女性は、本治療薬を正常に代謝できる女性と比べ、無再発期間が有意に短く、無病生存率も有意に低かった。CYP2D6代謝能力が最も低下した女性群(CYP2D6の不全代謝者または強力なCYP2D6阻害剤を服用している患者)では、タモキシフェン服用中の乳癌再発のリスクが3倍高かった。本試験(Goetz博士へのK-12訓練助成金によっても資金提供がなされていた)の最終結果は、11月18日にオンラインでBreast Cancer Research and Treatment誌に発表された。
10月18日に、Goetz博士による本試験および関連する史料のプレゼンテーションがFDA(米国食品医薬品局)に対して行われ、諮問委員会がタモキシフェンの添付文書ラベルの変更を全会一致で推奨した。今回の変更は、CYP2D6に影響を与える遺伝的要因と薬剤相互作用の双方によるリスクの増加に関する情報を含む。大半の委員会委員はまた、ラベル上に、タモキシフェンの処方前にCYP2D6遺伝子型の検査を行う選択肢について言及することも推奨した。
「薬理遺伝学への期待は、患者に対して治療を個別化できることにあります。」とGoetz博士は言う。「タモキシフェンの場合、CYP2D6は、その患者が、タモキシフェン投与後にアロマターゼ阻害剤を連続して投与することで治療が可能であるか、またはアロマターゼ阻害剤を初めに投与するべきであるかを示す標識である可能性があります。」
しかし、Goetz博士の説明によると、CYP2D6の遺伝的多様性に基づいて、タモキシフェン治療を受ける乳癌患者を選択することが、臨床転帰の改善につながるかどうかを見極めるには、前方視的臨床試験が必要である。
— Sharon Reynolds
原文掲載日
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
乳がんに関連する記事
転移トリネガ乳がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の効果予測ツールを開発
2024年11月13日
FDAが高リスク早期乳がんに対し、Kisqaliとアロマターゼ阻害剤併用およびKisqali Femara Co-Packを承認
2024年10月24日
乳がん後の母乳育児が安全であることを証明する初めての研究結果
2024年10月14日
● この結果は、乳...
HER2陽性乳がんの脳転移にトラスツズマブ デルクステカン(抗体薬物複合体)が有効
2024年10月21日
• 今回の結果は、今まで行われてきた複数の小規模...