Gliadel® Waferを併用した集学的治療により神経膠腫患者の生存期間が延長する可能性

キャンサーコンサルタンツ
2009年8月

Gliadel®(カルムスチン)Waferにより、新たに多型性神経膠腫(GBM)と診断され集学的療法を受けた患者の生存期間が延長することが、デューク大学の研究者らにより報告された。本試験の詳細は、Cancer誌2009年8月号に掲載されている。[1]

GBMは最も発症率の高い、致死的な種類の原発性脳腫瘍の1つである。GBM患者は概して予後が悪く、通常、姑息的治療が行われる。標準初回治療は外科手術であり、その後に放射線療法および化学療法が行われる。生存期間中央値は約1年で、3年生存率は10%を下回る。術後の全身状態が良好な患者の生存期間は延長してきている。他の有害なリスク因子にも関わらず、放射線療法と化学療法が生存期間を延長することが試験により示されてきた。二次治療は有効でない場合が多い。

カルムスチン(BiCNU®)は神経膠腫の治療で多く用いられる化学療法剤で、Gliadel Waferはカルムスチンを成分とする10セント硬貨大の固形インプラントである。ウエハーは手術による神経膠腫摘出の際に生じた空洞に埋め込まれ、空洞および局所組織にカルムスチンを徐々に放出する。Gliadel WaferはGBMの最新治療法として認可されている。

本試験は、Gliadel Waferを埋め込んだ患者群と埋め込まなかった患者群からなる新たに診断された85例を対象とした。全患者に対し、放射線療法とTemodar® (テモゾロマイド)の同時併用+交代化学療法を行った。Gliadel Waferを埋め込まなかった患者群の1年生存率は69%、2年生存率は29%、生存期間中央値は72.7週であった。一方、Gliadel Waferを埋め込んだ患者の1年生存率は81%、2年生存率は47%、生存期間中央値は89.5週であった。「カルムスチンウエハーをテモゾロマイド同時併用放射線療法に併用後、交代化学療法を行うことは、忍容性が良好で、有効な治療であり、放射線治療単独と比較して生存期間が延長する。カルムスチンウエハー療法と、Stuppレジメンに放射線治療後の集学的治療を行う療法との厳密な比較を行うためには、ランダム化プロスペクティブ試験が必要である。」と著者らは結論づけている。

コメント:
本試験は、Gliadel WaferをGBMの標準治療と併用した際に付加的な効果が得られることを示す他のデータを裏付けるものである。

参考文献:
[1] Affronti ML, Heery C, Herndon JE, et al. Overall survival of newly diagnosed glioblastoma patients receiving carmustine wafers followed by radiation and concurrent temozolomide plus rotational multiagent chemotherapy. Cancer. 2009;115:3501-3511.


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翻訳担当者 川瀬 真紀

監修 平 栄(放射線腫瘍科)

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