カルボプラチン強化療法によりグループ3髄芽腫の生存率が上昇

放射線療法にカルボプラチンを追加することにより、グループ3型小児髄芽腫患者の5年生存率が19%上昇したことが第3相ランダム化比較試験で明らかになった。

シアトル・チルドレンズ病院のSarah Leary博士らによると、グループ3とは、統合診断の一部として診断精度の向上に役立つ可能性のある、少なくとも4つの髄芽細胞腫分子分類の1つである。2016年の世界保健機関(WHO)の脳腫瘍分類は統合診断をWNT(WNTシグナル経路活性化型)、TP53変異の有無に関わらないSHH(SHHシグナル経路活性化型)、非WNT/非SHH(暫定的にグループ3およびグループ4に指定)の髄芽腫と定義している。

「髄芽腫の子どもたちには、顕微鏡だけではなくDNAの変化に従って腫瘍を特徴づけたり分類したりする統合的な分子診断が必要であることを本試験は裏付けている」とLeary博士は ロイター・ヘルスに電子メールで述べた。

「治療を追加することの効果を確認することはそれほど意外なことではありませんが、驚くべきことは今回の試験がより個別化された統合分子診断を行うために現在使用しているツールができる前に開始されたにもかかわらず、この試験が腫瘍生物学の重要性を明確に示したことです」とLeary博士は語る。「これにより、どのような人たちが利益を得る可能性が高いか、また同様に、どのような人たちが利益を得る可能性が低いか、さらにどのような人たちが追加の治療を受ける必要がないのかをより適切に判断することが可能となります」。

「放射線治療中のカルボプラチン治療は、リスクが高いグループ3の髄芽腫の子どもたちに対する新たな標準的治療である」とLeary博士は結論づけた。

JAMA Oncology誌に掲載された多施設共同試験に2007年から2018年にリスクの高い髄芽腫と新たに診断された評価可能な患児261人が参加した。参加者の年齢の中央値は8.6歳で70%が男児である。参加者は登録時に臨床的高リスクの基準に沿って層別化され、72%が転移性病変、22%がびまん性無形成、5%が1.5 cm2以上の残存病変を有していた。

参加者は、36-Gyの頭蓋脊髄放射線療法と週1回のビンクリスチン投与に加えカルボプラチンの連日投与または非連日投与のいずれかの治療の後にシスプラチン、シクロホスファミド、ビンクリスチンを用いた6サイクルの維持化学療法を受け、維持療法中および維持療法後にイソトレチノインを12サイクル投与する群と投与しない群に無作為に割り付けられた。

臨床的な主要評価項目は無増悪生存率であり、生物学的な主要評価項目はDNAメチル化アレイによる分子サブグループ分類である。

参加者全員の5年無増悪生存率は62.9%、全生存率は73.4%であった。

イソトレチノインのランダム化は有効性がみられないために早期に終了した。

カルボプラチン投与群の5年無増悪生存率は、カルボプラチン非投与群の59.2%に対し66.4%であり、その効果はグループ3分類の患児のみで認められ、カルボプラチン投与群では73.2%、非投与群では53.7%であった。

 5年全生存率は分子分類グループにより異なっており、WNT経路活性化群は100%、SHH経路活性化群は53.6%、グループ3は73.7%、グループ4は76.9%であった。

「これらの試験結果は髄芽細胞腫の臨床的および分子的リスクを統合的に分類することの価値をさらに裏付けるものです」と著者らは結論づけた。

「より多くの分子データがリスク層別化に役立つ可能性がある一方で、これらのデータをすべて患者に適用する方法について多くの臨床医や研究者に疑問を残しています」と関連論説の共著者である米国国立がん研究所(NCI)のSadhana Jackson博士はロイター ヘルスへの電子メールでコメントしている。

「グループ3とグループ4を区別する検査方法が確立されていないため、今回の試験結果が適用できるかどうかに課題があります」とSadhana Jackson博士は指摘する。「また、治療を適宜段階的に減少させることにより髄芽腫治療の毒性を低下させたいという小児神経腫瘍学界の真摯な願いにもかかわらず、現在までに治療強度を高めた試験のみが成功したと証明されていることも注目に値します」と述べている。

「今回の試験はリスクが高いグループ3の髄芽腫の子どもたちの生存にわずかな希望を与え、詳細な分子解析を取り入れることにより、リスクの高いすべての患者の治療パラダイムが改善できることを示しています」とSadhana Jackson博士は語る。「また、高リスクなグループ3髄芽腫の挙動を知ることができ、より治療に反応するまたは治療が有効であろう高リスク患児に対する将来の治療法の選択肢を与えてくれます」。

出典:https://bit.ly/3i6Bexvhttps://bit.ly/3ycbHsk JAMA Oncology誌 オンライン版 2021年6月22日

翻訳担当者 松長愛美

監修 辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター)

原文掲載日 

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