遺伝子変異のほとんどない再発膠芽腫は免疫療法薬に最も良く反応する
膠芽腫という脳腫瘍は特に複雑である。膠芽腫は致死的疾患であるが、再発した腫瘍において新しい免疫療法薬に反応を示すことがあり、最大20%の患者が予後予測を大きく超えて生存することができる。
免疫療法薬を生命予後の延長に結びつけようとしてきた研究者らは、この延命効果の原因を追及してきた。
米デューク大学のプレストン・ロバート・ティッシュ脳腫瘍センターのチームが示した新しい知見が有望な答えを示している。彼らは、遺伝子変異量がきわめて低い再発膠芽腫は、遺伝子変異量が高い同腫瘍と比べて免疫療法にはるかに高い治療反応性を示すことを発見した。
2021年1月13日付けNature Communications誌オンライン版に掲載された今回の発見は、免疫療法薬への治療反応性が良好な腫瘍を予測するバイオマーカーとして臨床医の助けとなりうる。また、免疫療法薬の効果を高めるために必要な条件を作る新しいアプローチにつながる可能性もある。
「膠芽腫は根治が難しく、今まで多数の有望なアプローチがあったにも関わらず生存期間延長における進展はほとんどなく、ずっと悔しい思いでした」とDavid Ashley医学博士は述べている。同氏はデューク大学医学部の脳神経外科、内科、小児科、病理学の教授で、今回の研究の統括著者である。
「本学で開発されたポリオウイルス療法を含め、デューク大学は複数の異なる免疫療法で成功を収めています」とAshley氏は続けた。「これらの治療法が再発膠芽腫に使用され、一部の患者での著効は心強いですが、依然として約80%の患者が亡くなっています」。
Ashley氏らは、再発膠芽腫患者に対してデューク大学のポリオウイルス療法、免疫機構による制御を開放して腫瘍を攻撃するいわゆるチェックポイント阻害薬投与のいずれかを行い、それぞれの遺伝子解析を行った。
どちらの治療を受けた再発膠芽腫患者も、低レベル遺伝子変異量の患者の方が、高レベル遺伝子変異量患者よりも長く生存した。しかしながら、この傾向は再発腫瘍患者のみに当てはまるものであり、新しく診断を受けた未治療患者には当てはまらなかった。
「この結果は、膠芽腫の初回治療の標準治療である化学療法が(免疫)炎症応答を変化させている可能性を示しています」。化学療法は再発腫瘍の炎症応答を活性化する誘因を惹起する重要な役割を果たしている可能性がある、とAshley氏は付け加えた。
膠芽腫におけるこの知見は、低レベル遺伝子変異量と免疫療法薬への良好な反応の間に相関関係を同様に示す、腎がんや膵臓がんを含む他のがん種にも関連している可能性があるとAshley氏は述べている。
本研究の著者は、Ashley氏のほか、Matthias Gromeier、 Michael C. Brown、 Gao Zhang、 Xiang Lin、 Yeqing Chen、 Zhi Wei、 Nike Beaubier、 Hai Yan、 Yiping He、 Annick Desjardins、 James E. Herndon II、 Frederick S. Varn、 Roel G. Verhaak、 Junfei Zhao、 Dani P. Bolognesi、 Allan H. Friedman、 Henry S. Friedman、 Frances McSherry、 Andrea M. Muscat、 Eric S. Lipp、 Smita K. Nair、 Mustafa Khasraw、 Katherine B. Peters、 Dina Randazzo、 John H. Sampson、 Roger E. McLendon and Darell D. Bignerである。
本研究は、The Brain Tumor Research Charity、 Jewish Communal Fund、 Circle of Service Foundation、 Uncle Kory Foundation、 米国国防総省(W81XWH-16-1-0354)、米国国立衛生研究所 (R35CA197264、 P01CA154291、 P50CA190991、 R01NS108773、 R01NS099463、 R21NS112899、 P01CA225622、 F32CA224593)から資金提供を受けた。Angels Among Usの募金イベントおよびAsness Family Foundationの寄贈からも援助を受けた。
著者であるGromeier、Brown、Desjardins、Bolognesi、Henry Friedman、Nair、Sampson、BignerおよびAshley氏は、Istari Oncology, Inc.社がライセンスを持つポリオウイルス療法に関する知的財産を保有している。Gromeier、Desjardins、Bolognesi、Allan Friedman、Henry FriedmanおよびBignerは、Istari Oncology, Inc.社の株式を保有している。その他の開示事項は、公開論文に記載されている。
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