侵襲性髄膜腫にエベロリムス+オクトレオチド併用が有望

mTOR阻害薬エベロリムス(販売名:アフィニトール)+ソマトスタチン作動薬オクトレオチド(販売名:サンドスタチン)による分子標的薬併用療法が、侵襲性髄膜腫患者において有望な抗腫瘍活性および生存期間延長をもたらしたとの第2相試験の結果が、米国がん学会(AACR)のClinical Cancer Research誌で発表された。

髄膜腫は最も一般的な成人原発性脳腫瘍であり、全体の37%を占める。標準的治療は手術であり、より侵襲性の高い腫瘍に対しては手術後に放射線療法あるいは定位放射線照射を行う。「手術を実施した腫瘍の約20%が侵襲性髄膜腫で、放射線療法あるいは定位放射線照射の後に腫瘍が進行した場合、患者の予後は不良です」と、ティモンヌ病院(フランス、マルセイユ)の脳神経外科助教であるThomas Graillon医学博士は話した。「全身療法はこれまで有効性または十分な臨床的有用性を示す明らかな証拠が得られていませんでした」と同博士は付け加えた。

「エベロリムスとオクトレオチドを併用することで、多くの患者の腫瘍が長期にわたり有意に安定しました。今回の結果は、この併用療法を侵襲性髄膜腫の有望な治療選択肢とみなして、ランダム化比較試験でさらに研究する価値があることを示しています」とGraillon博士は指摘した。

髄膜腫ではラパマイシン機構的標的(mTOR)経路の活性化が高頻度に認められ、ソマトスタチン受容体2(SSTRA2)が発現している。ソマトスタチンは中枢神経系にみられるホルモンであり、成長ホルモンの分泌を阻害する。Graillon博士らは以前の前臨床研究で、エベロリムスとオクトレオチドの併用が、新鮮な摘出組織試料から培養した初代細胞において相加的抗腫瘍効果を示すことを実証していた。

CEVOREM(Combination of EVerolimus and Octreotide in REsistant Meningiomas:治療抵抗性髄膜腫におけるエベロリムスおよびオクトレオチドの併用)試験では、世界保健機関(WHO)による分類で主にグレード2または3の成人髄膜腫患者20人を対象に、エベロリムス+オクトレオチドの有効性を探索した。グレード1の腫瘍を有する患者が2人、グレード2の腫瘍を有する患者が10人、グレード3の腫瘍を有する患者が8人であった。すべての患者にエベロリムス10 mgを1日1回経口投与し、オクトレオチド30 mgを月1回筋肉内投与した。

6カ月での無増悪生存率(PFS)は55%であり、試験の主要評価項目期待値を満たしていた。「手術または定位放射線照射の追加に不適格な侵襲性髄膜腫患者の無増悪生存率は通常、約10~20%ですが、これはそれを大きく上回っています」とGraillon博士は語った。

6カ月全生存率は90%、12カ月全生存率は75%であった。また、臨床試験責任医師らの報告によれば、3カ月時点で78%の腫瘍に50%を超える腫瘍増殖率低下がみられた。

この併用療法は大半の患者において忍容性良好であり、これは膵神経内分泌腫瘍患者への現行の用法と同様であるとGraillon博士は指摘した。患者20人中11人が口内炎を発症し、そのうち3人にグレード3の有害事象が発生した。その結果、1人の患者でエベロリムスを中止し、別の1人の患者はエベロリムスとオクトレオチドの両方を中止した。

臨床試験責任医師らは、T1強調ガドリニウム造影でミリ単位の薄切3次元磁気共鳴画像などの放射線学的方法を用いて、組入れ時(試験への組入れ基準として最低増殖率が明記されていた)ならびに投与後3カ月および6カ月時点での腫瘍増殖率を評価した。「今回の結果は、3次元の腫瘍増殖率を解析することにより、この患者群における治療効果をより適切に評価できることを示唆しています。投与前に対する投与後の3次元腫瘍増殖率は、6カ月無増悪生存率を補完する感度の高い評価項目であり、今後のランダム化比較試験に含めるべきです」とGraillon博士は述べた。

本研究の主な制限は、患者数が少なかったこと、およびランダム化されていなかったことである。

本研究にはOlivier Chinot医師および神経腫瘍学チームも携わっており、フランス国立がん研究所の支援を受けた。本研究で用いた薬剤はフランスのノバルティスファーマ社から提供を受けた。著者らは利益相反がないことを宣言している。

翻訳担当者 角坂功

監修 西川亮(脳腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター)、

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