放射線療法に Temozolomide (Temodar)併用で多形性膠芽腫の生存を上げる

Adding Temozolomide (Temodar) to Radiation Increases Survival in Glioblastoma Multiforme
( 06/07/2004掲載, 12/05/2005更新) カナダとヨーロッパで行われた大規模無作為試験で、多形性膠芽腫と呼ばれる脳腫瘍治療に、放射線にtemozolomide(テモダール)を加えることにより生存期間を延長した。このアプローチは米国では何年も慣習的に行われてきたが、今回の結果で確実となった。標準治療として確立すべきである。


要約
カナダとヨーロッパで行われた大規模無作為臨床試験において、多形性膠芽腫と呼ばれる脳腫瘍の放射線治療に、テモゾロミドを加えることで生存率が上がりました。米国ではここ何年もこのアプローチは慣習的に行われていましたが、この結果は決定的なもので、このアプローチは標準治療として確立されるべきでしょう。

出典  American Society of Clinical Oncology (ASCO) annual meeting, New Orleans, June 7, 2004 その後の最終結果はthe New England Journal of Medicine2005年3月10日号に発表)(ジャーナル要旨参照)

背景
多形性膠芽腫は、成人において最も多く、最も悪性度が高いとされる脳腫瘍で、治癒不可能と考えられています。患者の大半は診断後1年以内に死亡します。この治療薬の以前の有望な早期試験に基いて、米国では、たいていの医師はこれらの患者に放射線治療後テモゾロミドを投与してきました。

試験
ASCOで発表された試験では573人の患者が2つのグループに無作為に分けられました。一つの群は、生検または手術後放射線治療を受けました。もう一つの群では、放射線治療を始めた同じ日にテモゾロミドの連日投与を始め、放射線治療後も引き続き6ヶ月受けました。

Roger Stupp, M.D.氏( University Hospital in Lausanne, スイス)は、European Organization for Research and Treatment of Cancerと the National Cancer Institute of Canada Clinical Trials Groupがコーディネートするこの臨床試験を指導しています。

(プロトコル要旨参照.)

結果
2年後、放射線治療だけを受けた患者は10%だったのに対し、テモゾロミドを投与された患者の26%が生存していました。放射線+テモゾロミド群の生存期間の中央値は14.6ヶ月で、放射線だけの群では12.1ヶ月でした。無進行生存期間(腫瘍が再び増殖をはじめるまでの期間)は、テモゾロマイド群は7.2ヶ月、その他の群は5ヶ月でした。

この併用療法の副作用はおおむね軽度から中程度でした。患者の10%以下で、重度の血球数値の降下がみられ、3人だけが重度の感染症に陥りました。

制限事項
「70歳以下の患者で全身状態のよい患者だけが試験に登録されました」と、ASCOのプレゼンテーションでコメントを述べたMichael Prados, M.D.氏(the University of California, San Franciso)は付け加えました。このことは、この結果が多形性膠芽腫のすべての患者に適応可能ではないかもしれないことを示唆していますと、彼は述べています。

Howard A. Fine, M.D.氏(the National Cancer Institute’s Center for Cancer Research)によると、この試験にはまだ未回答の問題が残されています。例えば、生存率の改善は、放射線治療中の低用量テモゾロミドからくるものか、放射線後の6ヶ月のテモゾロミドからか、その両方からなのかあきらかでないと、彼は言っています。以前の試験では放射線後の化学療法だけに利益があるということが示されていましたが、今回の試験はその疑問に回答できるようには作られていません。

その上、放射線治療後のテモゾロミドの効果を示した他のほとんどの試験では、放射線後1年の投与でしたが、この試験では6ヶ月の投与です。したがって、さらに長期に投与した場合、もっとベネフィットが大きくなるのかどうかも明らかではないと、彼は言います。

コメント
この試験では、放射線治療中に加え/または放射線治療後のテモゾロミドの使用が、この病気のファーストライン治療として効果があることを証明しました。「この結果により、おそらく標準治療は変わるでしょう。」と、Stupp氏は述べました。その評価はFine氏も同意しています。しかしながら、「われわれはこの困難な病気の患者に明らかに優れた治療法を開発するために、まださらに長い道のりが必要だとFine氏は述べています。

The Lancet Oncology 12月号の関連試験結果で、ここで報告されている利点に対して患者の生活の質への否定的影響はないことが示されている。 (ジャーナル要旨参照)   (野中希 訳 Dr.榎本 裕(泌尿器科) 監修 )

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