装着型医療機器TTフィールドにより膠芽腫患者の生存率が向上
膠芽腫患者では、化学療法薬であるテモゾロミド治療に加えて交流電場を送達する医療機器を装着した患者のほうが、テモゾロミド単独療法を受けた患者よりも全生存中央値が有意に改善したとの第3相ランダム化臨床試験の最終結果が、2017年4月1~5日開催の米国がん学会(AACR)年次総会で発表された。
「膠芽腫は、成人にとって最も致命的な中枢神経系の原発性悪性腫瘍です」とノースウェスタン大学フェインバーグ医科大学院神経外科学部教授で、ノースウェスタン大学ロバート・H・ルリー包括がんセンター戦略イニシアチブ部副部長であるRoger Stupp医師は述べた。「10年以上前に放射線療法にテモゾロミドを加えると、2年生存率が10%から27%に上昇することが最後に示されて以来、膠芽腫患者の生存率を向上させることが示された治療法はありませんでした」。
「テモゾロミドに腫瘍治療電場(TTフィールド)を加えることで得られる有益性が、放射線療法にテモゾロミドを加えた際に得られた有益性と同程度であることを知り非常に興奮しています。TTフィールド+テモゾロミド併用療法群患者の2年生存率は43%でした」と同氏は続けた。「これらのデータはこの新たな治療法の効果を示しています。他の種類のがん患者でこの併用療法の検証を行っていますが、その試験結果を期待しています」。
TTフィールドは、中間周波数(200kHz)で交流する低強度の電場であり、細胞分裂の阻害により抗がん作用を発揮すると同氏は説明した。膠芽腫患者では、患者が操作する装着型医療機器によりTTフィールドが継続して脳に送達される。「患者が非常に早く、多くの場合1時間未満で、この医療機器の操作法を習得することがわかりました」と同氏は述べた。
2009年7月~2014年11月の間に、Stupp医師らは新たに膠芽腫と診断された患者695人を第3相臨床試験の対象とした。そのうち466人は交流電場腫瘍治療システム(医療機器オプチューン)によるTTフィールド送達+テモゾロミド併用療法に、229人はテモゾロミド単独維持療法に無作為に割り付けた。
最初に試験登録した患者315人から得た暫定的データにより、米国食品医薬品局が新たに診断された膠芽腫に対しオプチューンを承認するに至った。「現在、試験登録した患者695人すべてに関し、長期転帰を含めた最終結果の報告を計画中です。このデータはTTフィールドを用いた治療法が患者の生存に有益であると立証しています」と同氏は述べた。
全生存期間中央値は、TTフィールド+テモゾロミド併用療法群の患者で21カ月であったのに対し、テモゾロミド単独療法群の患者では16カ月であった。
2年、3年、4年および5年生存率は、TTフィールド+テモゾロミド併用療法群の患者のほうがテモゾロミド単独療法群の患者よりも有意に上昇しており、それぞれ、43% 対 31%、26% 対 16%、20% 対 8%、および13% 対 5%であった。予後因子が最も不良な患者も含め、治療を行った患者サブグループすべてにおいてTTフィールド は有効性を示した。
全生存期間に対するハザード比は0.63であり、これはTTフィールド+テモゾロミド併用療法群の患者はテモゾロミド単独療法群の患者よりも死亡リスクが37%低くなることを意味している。
「TTフィールドは完全に新しい治療法なのです」と同氏は述べた。「既成概念にとらわれずに物事を考え続けて別の新たな治療法を発見し、それから既存の治療法と併用して患者に最大の利益を保証する最善の方法を身につける必要があるのです」。
本研究は、NovoCure Ltd社からの資金援助を受けた。Stupp医師はNovoCure Ltd社より旅費支援を受けており、EMD Serono社、Merck & Co社、Novartis社、Pfizer社、およびRoche社、の諮問委員会のメンバーである。
*サイト注: 参考 ノボキュア株式会社ホームページ
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