FDAが膠芽腫の治療に対しオプチューンの適応拡大を承認

米国食品医薬品局(FDA)ニュース

編集者注:本プレスリリースは、2015年10月8日に更新された。

米国食品医薬品局(FDA)は、攻撃的な脳腫瘍の一種である膠芽腫(GBM)の新規症例に対し、医療機器であるオプチューンの適応拡大を承認した。外科手術、放射線治療および化学療法の併用による標準治療に続いて使用される化学療法薬のテモゾロミド(TMZ)と併用して使用される。

米国国立がん研究所によれば、2015年には、23,000人近くのアメリカ人が、脳腫瘍または他の神経系のがんと診断され、それらの疾患がもとで15,000人以上が死亡する予測である。全ての脳腫瘍のうち約15%が膠芽腫であり、好発年齢は45~70歳の成人である。膠芽腫は標準治療に強い抵抗性を示す傾向があるため、患者が診断を受けた後の生存期間は、平均でわずか15カ月未満である。

「この治りにくく攻撃性な脳腫瘍の形態である膠芽腫であると新たに診断された患者は、今や利用可能な他の治療選択肢を持ちます」とFDA 医療機器・放射線保健センター医療機器審査室長を務めるWilliam Maisel医師(公衆衛生学修士)は述べた。「その治療では治癒はしないものの、生存期間が数カ月延長します」。

適応拡大の根拠となった臨床試験では、オプチューンおよびテモゾロミドによる治療を受けた患者が、テモゾロミド単剤投与を受けた患者より平均3カ月長く生存した。

オプチューンは、化学療法を受けた後に再発または増悪した膠芽腫を有する患者に対し、2011年に初めて承認された。本適応拡大により、オプチューンは増悪前の膠芽腫の標準治療の一部として用いることが可能となった。

新たに診断された膠芽腫に対し、オプチューンは標準治療の代替ではなく、むしろ補助療法として用いられることを目的としているが、医師の指示なしに用いてはならない。

オプチューン使用時は、医療従事者が患者の頭皮の表面に、「腫瘍治療電場」(TTField)と呼ばれる低強度の交流電場を伝達するための電極を装着する。特殊な形状および素早く分裂する特性を有する膠芽腫の腫瘍細胞は、TTFieldに曝露された時ダメージを受けやすく、腫瘍の増殖を停止する可能性がある。

本医療機器は持ち運び可能であり、電池または電源のコンセントにプラグを差し込むことで作動する。患者は自宅または職場で本医療機器を使用することが可能であり、通常の日常活動を継続することができる。

FDAは、新たに診断された膠芽腫を有する患者695人が参加した、オプチューンおよびテモゾロミド併用療法とテモゾロミド単剤投与を比較した臨床試験の結果に基づき、オプチューンの適応拡大を承認した。テモゾロミドと併用して本医療機器を使用した患者は、平均約7カ月増悪しなかったのに対し、テモゾロミド単剤の患者は平均約4カ月であった。オプチューン+テモゾロミド投与群は治療開始後、平均19.4カ月生存したのに対し、テモゾロミド単剤投与群は平均16.6カ月しか生存しなかった。

新たに診断された膠芽腫用のオプチューンは、FDAの優先審査制度のもとで審査され、生命にかかわる病状を治療する類の医療機器として迅速承認された。

オプチューンで発現した副作用のうち最もよくみられたのは、皮膚刺激であった。

もし患者が作動中の埋め込み式機器を持っている場合、頭蓋欠損の場合、または心電図のステッカー使用等で伝導性のあるヒドロゲルに対する既知の感受性がある場合は、オプチューンを使用すべきではない。

オプチューンは、ニューハンプシャー州ポーツマスのNovocure社で製造されている。

米国保健福祉省内の機関であるFDAは、公衆衛生の促進および保護、中でもヒト用および獣医用医薬品、ヒト用ワクチンおよび他のヒト用生物学的製剤ならびに医療機器の安全、効果および危機管理の確保につとめている。本機関はまた、米国の食糧供給、化粧品、栄養補助食品、電子放射線を発する製品の安全および危機管理、ならびにタバコ製品の規制にも関与している。

翻訳担当者 太田奈津美

監修 西川 亮(脳腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター)

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