脳腫瘍およびその他の固形がんに対する免疫療法をルートヴィヒ癌研究所とCRIが評価
キャンサーコンサルタンツ
本臨床試験はAstraZeneca社の国際的バイオ医薬品研究開発部門であるMedImmune社と協同のCVC臨床試験ネットワークを通して実施されている。CVC臨床試験ネットワークとはルートヴィヒ癌研究所(Ludwig Cancer Reserach)およびCRI(癌研究所:Cancer Research Institute)により共同で運営されており、がん治療のための免疫療法を考案し、開発する専門知識を有する基礎および臨床の免疫学研究者から成る国際的なネットワークである。CVC臨床試験ネットワークのリーダーであるJedd Wolchok氏は、スローンケタリング記念がんセンターにあるLudwig Collaborative Laboratory室長、CRI Scientific Advisory Councilの副ディレクターである。
本GBM(多形性膠芽腫)臨床試験は非ランダム化、多施設共同の第2相臨床試験であり、MedImmune社のチェックポイント阻害抗体durvalumab(デュルバルマブ、MEDI4736)のGBM患者における効果を探索するものである。GBMは、成人の脳腫瘍の中で最も侵襲性および致死性が高いがん種である。本臨床試験は新たにGBMと診断された患者群、再発患者群、標準治療が奏効しなくなった患者群という3つの群に対して実施される。
Ludwigの技術開発担当エグゼクティブディレクターJonathan Skipper氏は次のように述べている。「GBMは不可避的に死に至るがんであり、今までのところ既存薬を用いたどの治療法でも逃れられない。この脳腫瘍に対する治療レジメンに免疫療法が加われば、現在最良の治療法をもってしても余命中央値が約15カ月である患者に有意な利益をもたらすだろうと期待している」。
治験薬デュルバルマブは、PD-L1(programmed cell death ligand 1)に対するヒト化モノクローナル抗体である。PD-L1からのシグナルによって、腫瘍は免疫系の検知から逃れることができる。デュルバルマブはPD-L1からのシグナルを阻害し、腫瘍の免疫回避システムを無効化する。本抗体は免疫療法の中でもチェックポイント阻害療法と呼ばれる新規療法の一つである。チェックポイント阻害療法とは体内の免疫機能を外すものである。
本試験など将来有望な免疫療法試験に対して慈善基金や臨床リソースを組織的に提供するCRI Venture Fundのマネジングディレクターであり、Clinical AcceleratorのプログラムディレクターであるAdam Kolom氏は次のように述べている。「チェックポイント阻害剤は当然ながら、腫瘍関係者の間で相当な興奮をまき起こしている。というのも、それらの適用によってさまざまながん種に対して顕著な結果が得られるからである。今回の試験はこの免疫療法剤をGBMという治療困難ながんに対して行った初めての試験であり、その結果はGBM患者コミュニティからも待ち望まれている」。
もう一つの臨床試験は、Ludwig およびCRIが2013年に開始した非ランダム化、多施設共同の第1相臨床試験であり、卵巣がん、非小細胞肺がん、大腸がん、頭頸部がん、子宮頸がん、腎がんなどのさまざまな進行性固形がんに対して、デュルバルマブともう一つのチェックポイント阻害剤(抗CTLA-4抗体であるtremelimumab)の併用療法を評価する。
現在進行中の両試験は大規模な臨床試験計画の一部であり、単独または他の抗がん剤との併用による新規のがん免疫療法の評価を早急に進めるためにLudwigおよびCRIからサポートを受けている。これらの臨床試験に対して、患者の検体から得られた遺伝的および免疫学的なデータが集められる。その情報は評価済みの治療法の効果の手掛かりとなり、がん治療戦略の改良や開発を示唆するであろう。
出典: Ludwig Cancer Research プレスリリース
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