膠芽腫への放射線療法併用AZD1390の安全性と有効性を示す第1相試験
毛細血管拡張性運動失調症変異(ATM)キナーゼ阻害薬であるAZD1390は、標準治療の放射線治療と併用した場合、再発および新規診断の膠芽腫(GBM)患者において管理可能な安全性プロファイルを示し、再発膠芽腫患者においては予備的な有効性を示した。この国際共同第1相試験の結果は、2024年4月5日から10日まで開催された米国癌学会(AACR)年次総会で発表された。
「膠芽腫は致死的ながんであり、患者の多くは診断後2年以上生存できない」と、本試験結果を発表したスローンケタリング記念がんセンターのJonathan T. Yang医学博士は話す。「生存期間延長の努力にもかかわらず、現在の標準治療は、過去20年間大きな革新もなく、テモゾロミド(販売名:テモダール)併用または非併用の放射線治療が中心となっています。この状況は、この深刻な疾患に対する新薬開発の切迫した需要と、新規治療薬開発のこれまでの苦難を浮き彫りにしています」。
強度変調放射線療法(IMRT)は、新規診断された膠芽腫に対する標準治療で、がん細胞内のDNAを損傷することによってがん細胞を死滅させる。しかし、ATM細胞シグナル伝達経路は、放射線療法によって生じたDNA二本鎖切断(DSB)の修復を助けるよう活性化されるため、IMRTの効果を阻害する。ATM阻害薬はDSB修復を阻止するため、放射線治療のがん殺傷効果を高めることができる、とYang氏は述べた。
膠芽腫は原発性悪性脳腫瘍の約50%を占める。脳腫瘍の治療が困難であった理由のひとつは、血液脳関門によって、一部の治療薬が脳内に浸透して治療標的のがんに到達することが妨げられるからである。この課題のため、AZD1390は血液脳関門を通過するように設計され、最近、健常ボランティア試験でAZD1390が無傷の関門を通過することが確認された。他の前臨床試験では、正常で健康な脳組織に害を与えず、周辺領域のIMRT毒性を悪化させることなく、AZD1390の抗腫瘍効果が期待できることが示された。
Yang氏らは、ヒトにおいてIMRTと併用するAZD1390の安全性、忍容性、早期有効性、および最大耐用量を評価した。2024年2月現在、第1相試験において115人の患者にAZD1390が投与されており、A群の再発膠芽腫患者75人、C群の初発MGMT非メチル化膠芽腫患者36人を含む。両群とも、患者にはAZD1390の1日1回投与量が漸増され、A群では35GyのIMRTを2週間で10回の分割照射とし、C群では60GyのIMRTを6週間で30回の分割照射とした。さらに、IMRT終了後、2週間にわたりAZD1390のアジュバント投与を行った。
115人の患者のうち、18人(15.7%)がグレード3または4のAZD1390関連の有害事象(AE)を経験し、グレード5の治療関連有害事象はなかった。また、4.3%の患者が AZD1390 のみに関連する有害事象により AZD1390 の投与を中止した。
「試験期間中に患者が経験した副作用のほとんどは、グレードが低く、容易に対処可能で、可逆的なものでした」とYang氏は述べた。
C群の患者は放射線被曝時間が長いため、放射線に関連した皮膚障害の頻度および重症度が高かったが、ほとんどの症例はステロイド外用薬および保湿剤による治療で容易に管理でき、完全に回復した、とYang氏は述べた。
研究者らは、A群では400 mg、C群では300 mgを最大耐用量とした。
両群の有効性データはまだ収集中であるが、標的への関与が認められた用量を投与したA群において全生存期間(OS)中央値12.7カ月という有望な結果が得られた。先行研究では、現在の標準治療の全生存期間は6~10カ月であることが示されている。C群の全生存期間解析のためのデータはまだそろっていない。
Yang氏は次のように話す。「膠芽腫の薬剤開発は、疾患が希少であり、有効性を確約する初期臨床指標がないため、一般的に困難です。この試験で認められた予備的な有効性がピボタル試験(極めて重要な試験)で証明されれば、膠芽腫における切迫したニーズに対応するための重要で生物学的な裏付けのある方法となることでしょう」。
Yang氏は、次の開発段階の計画が現在進行中であると述べた。
本試験の限界として、単一群非盲検試験であり、サンプル数が少ないことである。
- 監訳 辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター)
- 翻訳担当者 山田登志子
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- 原文掲載日 2024/04/09
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