ICT-107ワクチンは多形性膠芽腫(GBM)患者の生存期間を延長しない

キャンサーコンサルタンツ

第1相臨床試験の有望な結果にもかかわらず、その後の第2相臨床試験で、ICT-107ワクチン治療は多形性膠芽腫(GBM)患者の有意な全生存期間の延長につながらなかった。

GBMは主に成人において発症する悪性度の高い脳腫瘍の一種である。通常、治療として術後の放射線および化学療法が実施される。標準治療による生存期間の中央値は診断後15カ月であり、5年以上生存する患者はわずか10%にすぎない。積極的な治療でも生存期間が短い傾向にあることから、研究者らはこの疾患の新しい治療法の評価をしてきた。

ICT-007は免疫システムに癌細胞の存在を知らせて殺腫瘍作用を活性化するために設計されたワクチンであり、膠芽腫細胞の発生に関わる6種類の抗原を標的としている。

ワクチンは、免疫系が腫瘍細胞を「侵略者」として認識するのを助ける役割を果たす抗原提示細胞である樹状細胞を基本にしている。樹状細胞はそれぞれの患者から通常の採血で得られる白血球細胞に由来している。実験室で樹状細胞は6種類の抗原の合成ペプチドと培養される。この過程で樹状細胞は腫瘍抗原を標的として認識するよう「訓練」される。ワクチン内の「新しい」樹状細胞が患者の皮下に注射されると、樹状細胞は残存腫瘍細胞を探して破壊しようとする。ワクチンは標準の放射線療法および化学療法後に、2週間間隔で3回投与される。

現行の第2相臨床試験はランダム化二重盲検、プラセボ対照試験であり、ワクチンまたはプラセボの投与をランダムに割り付けられた新規GBM患者124人を対象に行われた。新規膠芽腫患者におけるICT-107の安全性および有効性を評価するために、試験が計画された。すべての患者に手術による切除および化学放射線療法が実施された。試験のすべての患者に現在の標準治療であるテモゾロミド(テモダール)が投与され、81人の患者にICT-107が投与された。

試験治療は、化学放射線療法後の4回のICT-107導入投与およびその後の増悪までの維持投与から構成された。試験の主要評価項目は全生存期間、副次的評価項目は無増悪生存期間、安全性および免疫応答などであった。

試験結果は、ICT-107を投与された患者は、プラセボを投与された患者に比べて約2~3カ月だけ長く生存したが、その差は統計学的に有意と考えられなかったというものであった。これに対し、ワクチンで無増悪生存期間は改善した。ワクチンを投与された患者で、無増悪生存期間の中央値がプラセボ群に比べて2カ月延長した。

第1相臨床試験の結果では、本ワクチンは生存期間をかなり延長できるかもしれないことが示された。本試験では主要エンドポイントに達しなかったが、研究者らは無増悪生存期間の改善は有望であると言及している。適切な終了時点が決定されるまで、まだ増悪していない患者には投与が継続され、会社は試験データの解析を継続する予定である。


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翻訳担当者 木下秀文

監修 西川 亮(脳・脊髄腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター)

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