膠芽腫においてアバスチン併用による新たな毒性は認められず

キャンサーコンサルタンツ

標準的化学放射線療法にアバスチン(ベバシズマブ)を併用することで、新たな毒性を示すことなく膠芽腫の進行を有意に遅らせるという研究結果が、米国放射線腫瘍学会の年次総会で示された。

膠芽腫は、悪性の脳腫瘍であり、主に成人に発症する。治療は、多くの場合、外科的手術の後、放射線療法およびテモダール(テモゾロミド)を用いた化学療法で行われる。積極的な治療にもかかわらず、生存者が少ない傾向にあることから、研究者らはこの疾患に対する新たな治療法の評価を続けている。

アバスチンは分子標的治療薬であり、血管新生において重要な役割を担っているVEGFというタンパク質の働きを阻害する。この作用により、癌への栄養および酸素の供給は妨げられ、癌の成長は抑制される。アバスチンは特定の肺癌、大腸癌、腎臓癌または膠芽腫の患者に用いられる。膠芽腫の患者に用いられるのは、他の治療法が効果を示さなかった場合である。

研究者らは、第3相ランダム化試験を実施し、膠芽腫と新たに診断された患者921人が登録された。患者は、標準的化学放射線療法にアバスチンあるいはプラセボを併用するグループに無作為に分けられた。4週間の休薬後、無作為に分けられたグループはそれぞれ、テモダールとアバスチンあるいはプラセボを併用した維持療法を開始した。その後、引き続きアバスチンあるいはプラセボを用いた単独療法を、病状が進行するまで行った。

この試験では、全生存期間と無増悪生存期間(PFS)の二つを主要評価項目とした。アバスチンを投与された患者の全生存期間中央値は16.8カ月であったのに対し、プラセボを投与された患者では16.7カ月と、アバスチンによる全生存期間の改善は認められなかった。しかし、PFSにはアバスチンによる改善が認められた。アバスチンを投与された患者のPFS中央値は10.6カ月であったのに対し、プラセボを投与された患者では6.2カ月であった。

その上、アバスチンは生活の質や機能的自立度に対して不利な影響を及ぼすことはなく、副腎皮質ホルモンの使用を減少させることと関連していた。有害事象が認められた割合は、プラセボ群で88.9%、アバスチン群で91.1%であり、二つの治療群間で認められた有害事象は、概ね同等であったことを研究者らは見出した。重篤な有害事象は、プラセボ群の12.0%、アバスチン群の15.4%で認められた。また、グレード3〜5の有害事象は、プラセボ群の29.1%、アバスチン群の31.5%で認められた。有害事象による治療の中断あるいは中止は、プラセボ群の4%、アバスチン群の6.3%で認められた。

アバスチン群において多く認められた注目すべき有害事象は、出血(16.3%に対し、プラセボ群では8%)、高血圧(10.4%対4.4%)、静脈血栓塞栓症(VTE、3.7%対3.6%)、創傷治癒の合併症(3.3%対1.1%)、タンパク尿症(両群とも2%)であった。

研究者らは、テモダールおよび放射線による治療にアバスチンを追加することで、治療レジメンの毒性プロファイルに情報を追加することなく、PFSを有意に延長したと結論づけた。

参考文献:
Saran F, Henriksson R, Mason W, et al. The addition of bevacizumab to temozolomide and radiotherapy in newly diagnosed glioblastoma multiforme improves progression-free survival without adding to radiotherapy toxicity. Proceedings of the 55th Annual Meeting of the American Society of Radiation Oncology. International Journal of Radiation Oncology Biology Physics.
2013; 87(2): Supplement page S16, Abstract 37.


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翻訳担当者 田村克代

監修 西川 亮(脳・脊髄腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター)

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