神経膠芽腫に対する放射線治療とテモダール併用の有効性が5年間の追跡調査により確認された
キャンサーコンサルタンツ
2009年3月
EORTC-NCIFランダム化試験を実施した研究者らは、長期間追跡調査により、多形成神経膠芽腫患者の治療で術後放射線治療にテモダール® (テモゾロミド)を併用することの有効性が長期間追跡調査で確認されたと報告した。この研究の詳細はLancet oncology誌の2009年3月9日号に掲載された。[1]
欧州癌研究治療機関(EORTC)とカナダ癌研究所(NCIC)によって行われた大規模な第3相多国間臨床試験に参加した研究者らは、放射線治療とテモダ―ルの同時併用補助療法を施行した多形神経膠芽腫の患者は放射線治療単独の患者より有意に生存期間が延長したことを以前報告していた。テモダ―ルを投与された患者の半数のみしか奏効しなかったが、治療が奏効した患者集団は癌検体のDNA検査により同定されうる可能性が示唆された。これらの結果はNew England Journal of medicine誌の2005年3月10日号に掲載された。
この臨床試験の現在の追跡期間中央値は5年を超えている。表1にこのランダム化試験の最新結果を示す。
表1:放射線+テモダ―ルと放射線治療単独の比較
放射線+テモダ―ル | 放射線治療単独 | |
患者数 | 287 | 286 |
死亡数 | 254(89%) | 278(97%) |
生存期間中央値 | 14.6カ月 | 12.1カ月 |
無増悪生存期間中央値 | 6.9カ月 | 5.0カ月 |
2年無増悪生存率 | 10.7% | 1.5% |
2年生存率 | 27.2% | 10.9% |
3年生存率 | 16.0% | 4.4% |
4年生存率 | 12.1% | 3.0% |
5年生存率 | 9.8% | 1.9% |
テモダールの併用は60~70歳を含む全ての年代に有効であることも著者らは報告した。これまで報告されてきたように、最も重要な予後因子はMGMTプロモーターのメチル化である。仮説では、プロモーターのメチル化によるMGMT DNA修復遺伝子のサイレンシングがDNA修復を障害し、結果としてテモダールに対する応答を高める。症例の45%ではMGMTプロモーターのメチル化があり、メチル化を有する癌細胞はテモダールに対してより応答性が高いことが判明した。
著者らは、「放射線とテモダールの併用での補助療法の効果は、5年間の追跡期間にわたり持続した。予後良好群の少数の患者は5年以上生存している。MGMTプロモーターのメチル化を確認することで、テモゾロミド補助療法による効果が最も期待できる患者を同定することができる。」と結論づけた。
コメント:
これらのデータは、脱メチル化されたMGMTプロモーターを有する患者はテモダールに由来する主要な効果を得る可能性が少ないため、別のレジメンにより治療されるべきであるということを示唆している。最近の臨床研究では、分子標的薬剤をテモダールに加えることにより多形神経膠芽腫の患者において応答性がさらに改善する可能性がより多く示唆されている。
参考文献:
[1] Stupp R, Hegi ME, Mason WP, et al. Effects of radiotherapy with concomitant and adjuvant temozolomide versus radiotherapy alone on survival in glioblastoma in a randomized phase III study: 5-year analysis of the EORTC-NCIF trial. Lancet Oncology. 2009; on March 9.
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翻訳担当者 北村裕太
監修 平 栄(放射線治療科)
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