進行消化管間質腫瘍(GIST)にripretinib承認(FDA)
FDAニュース速報 2020年5月15日
米国食品医薬品局(FDA)は、消化管に発生する腫瘍の一種である進行消化管間質腫瘍(GIST)の四次治療薬として初めてripretinib[リプレチニブ]錠剤(Qinlock[キンロック])を承認した。本剤は、イマチニブを含む3種類以上のキナーゼ阻害薬による前治療歴のある成人患者を対象としている。
「4つのFDA承認済みの標的治療薬(2002年にイマチニブ、2006年にスニチニブ、2013年にレゴラフェニブ、2020年初めにアバプリチニブ)などのGIST治療の開発は、過去20年間で進歩してきたにもかかわらず、一部の患者は治療に反応せず、腫瘍は進行し続ける。今回の承認により、GISTに対するFDA承認のすべての治療法を試し終えた患者にとって、新たな治療選択肢が生まれます」と、FDAのOncology Center of Excellence室長およびFDA医薬品評価研究センター(Office of Oncologic Diseases)の室長代理であるRichard Pazdur医師は述べる。
毎年、米国では約4,000~6,000人の成人がGISTと診断されている。GISTは、消化管の組織に異常な細胞が形成されることで発生する。GISTは最も一般的には胃、小腸、大腸で発生するが、消化管に沿ってどこでも発生する可能性がある。
リプレチニブはキナーゼ阻害薬であり、キナーゼと呼ばれる酵素の一種を阻害することで、がん細胞の増殖を抑える働きをする。
リプレチニブの承認は、FDAが承認した他の分子標的治療薬であるイマチニブ、スニチニブ、レゴラフェニブによる前治療を受けた進行GIST患者129人が登録された、国際多施設共同、ランダム化二重盲検プラセボ比較対照試験の結果に基づいている。本試験では、リプレチニブ投与群とプラセボ投与群に無作為に割り付けられた患者を比較し、無増悪生存期間(PFS)(臨床試験での初回治療からがんの増殖または死亡に至るまでの期間)がプラセボ群に比べてリプレチニブ群の方が長いかどうかを判断した。本試験では、患者は1日1回リプレチニブまたはプラセボを28日間のサイクルで投与され、腫瘍の増殖が認められる(病勢進行)か、または患者が耐え難い副作用を発症するまで繰り返した。病勢進行後、プラセボに無作為に割り付けられた患者には、リプレチニブに切り替える選択肢が与えられた。
平均して、リプレチニブ群の無増悪生存期間は6.3カ月であったのに対し、プラセボ群では1カ月であった。
リプレチニブの主な副作用は、脱毛(抜け毛)、疲労、吐き気、腹痛、便秘、筋痛(筋肉痛)、下痢、食欲減退、手掌足底発赤知覚不全症候群(手のひらや足の裏の皮膚反応)、嘔吐であった。
また、リプレチニブは皮膚がん、高血圧、駆出率低下(心臓の左心室の筋肉が正常なポンプ機能を発揮できなくなること)として現れる心機能障害などの重篤な副作用を引き起こす可能性がある。医療従事者は、日常的にこれらの症状や徴候がないか、またリプレチニブのその他のリスクがないかをチェックする必要がある。
リプレチニブは、発育中の胎児や新生児に害を及ぼす可能性がある。医療従事者は、妊娠中の女性にこのリスクについて説明し、また妊娠可能な女性、および妊娠可能な女性パートナーを持つ男性患者の両方に、治療中およびリプレチニブを最後に服用してから1週間は効果的な避妊を行うよう指導すべきである。リプレチニブ服用中は授乳しないよう助言が必要である。
FDAは、本申請を優先審査およびファストトラック指定、および画期的治療薬に指定した。これは、重篤な疾患の治療を目的とした医薬品の開発と審査を迅速化するもので、予備的な臨床証拠が既存の治療法よりも大幅な改善を示す可能性があることを示している場合に適用される。また、リプレチニブは、希少疾病用医薬品の開発を支援し奨励する希少疾病用医薬品指定も受けている。本審査には、臨床試験全ての申請を行う前にデータの提出を効率よく行うReal-Time Oncology Reviewと、FDAの審査の加速化を目的として、申請者が自発的に提出を行うAssessment Aidが用いられた。
FDAは、Project Orbisの一環として、本申請の審査を、オーストラリア薬品・医薬品行政局(TGA)およびカナダ保健省と共同で行った。FDAは、予定より3カ月早くリプレチニブを承認した。オーストラリア薬品・医薬品行政局とカナダ保健省で、本申請の審査が進行中である。
Deciphera Pharmaceuticals社が、FDAよりリプレチニブの承認を受けた。
FDAは、米国保健福祉省(NHS)の機関であり、人間や動物用医薬品、人用ワクチン・その他の生物学的製剤、医療機器の安全性、有効性、安定性を保証することにより、公衆衛生を保護している。また、米国の食糧供給、化粧品、栄養補助食品、電子放射線を発する製品、たばこ製品の規制などの安全と安定のためにも責任を負っている。
翻訳担当者 平沢 沙枝
監修 遠藤 誠(整形外科/九州大学)、
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
消化管間質腫瘍(GIST)に関連する記事
ctDNA血液検査は進行GIST患者の最適な治療法の決定に役立つ
2023年2月24日
イマチニブ治療後GISTに対するリプレチニブはスニチニブと同等の効果で副作用が少ない
2022年2月28日
希少遺伝子変異を有する消化管間質腫瘍(GIST)のFDA承認薬アバプリチニブ
2020年3月4日
FDAが希少変異を有する消化管間質腫瘍にアバプリチニブを承認
2020年1月23日