小児の消化管間質腫瘍(GIST)にみられる重大な分子欠損に重要な診断的意味合い
米国国立がん研究所(NCI)ニュースノート
原文掲載日 :2014年12月24日
米国国立癌研究所(NCI)の研究者らは、消化管間質腫瘍(GIST)として知られる小児がんに重要な診断的意味合いをもつと考えられる重大な分子欠損があることを明らかにした。小児GIST患者は通常、細胞内代謝とエネルギー産生に不可欠なコハク酸脱水素酵素(SDH)が欠乏している。小児GIST患者の腫瘍の一部には、SDH(SDHA、SDHB、SDHCおよびSDHD-総称してSDHxと呼ばれている)をコードする4つの遺伝子のひとつに発生した変異が認められる。しかし、小児GIST患者の中にはこの4つの遺伝子に変異が認められない患者もいる。2014年12月24日、Science Translational Medicineに電子版で公開された研究によると、対象患者ほぼ全例にいわゆるSDHC遺伝子のエピ変異が認められた。確認されたエピ変異は、(遺伝子発現を制御する)SDHC遺伝子プロモーターが過剰なメチル化を受けており、SDHC遺伝子発現およびSDHCタンパクの発現を妨げるものである。SDHCエピ変異は小児GIST患者の腫瘍にみられる唯一の分子欠損であり、他の種類の腫瘍にはみられないため、GISTにきわめて特異的であると思われる。エピ変異について知ることにより医師は、エピ変異と独自の臨床的特徴(たとえば、エピ変異と生存率の高低との相関)とを関連づけることが可能になるかもしれない。
SDHx変異が認められる(エピ変異がない)GISTとは対照的に、エピ変異が認められるGISTは遺伝性ではないと考えられる。これはエピ変異が、SDHx遺伝子変異のように、家族性癌症候群の存在を示す可能性は低いということを意味する。最も重要なことは、この研究結果によって診断手法が直ちに改善され、臨床研究を実施する研究者らが患者集団の腫瘍リスクを明確に示し、エピ変異を修復する可能性がある薬剤の臨床試験を開始することができるようになることだと研究者らは指摘する。NCI癌研究所センター、遺伝学部門長のPaul Meltzer医学博士とKeith Killian医学博士がこの研究を主導した。米国国立衛生研究所(NIH)のクリニカルセンターには、専門医の診断と治療を求めて主に小児のGIST患者が世界中から集まるため、NIH小児GISTクリニックは、本研究にとって独自の貴重な研究対象となった。小児GISTはまれであり、研究対象となりうる患者数を最大に保つため、研究者らは現行のゲノム分析方法を、一般的な保存用組織標本(ホルマリン固定、パラフィン包埋)に応用した。
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