標準標的療法が無効となったGISTの治療抵抗性を経口レゴラフェニブが打破

2012年11月21日

タグ:キナーゼ阻害剤肉腫標的療法

レゴラフェニブが他に承認薬のない患者に希望を与える


 致死性の稀な肉腫である転移性消化管間質腫瘍がすべての現行治療に対して抵抗性となった場合、新しい標的薬がその病勢をコントロールできることを示したと、国際臨床試験を統括したダナファーバー癌研究所の研究者らが報告した。

 GISTと呼ばれる消化管間質腫瘍の治療は、進行した転移期においても、2つの経口標的薬、イマチニブ(グリベック)とスニチニブ(スーテント)によって劇的に改善されてきた。これまで、GISTをコントロールできることが示され、FDAに承認された治療薬は、この2剤のみであった。しかしGISTは、85%以上の患者で7年以内にこれらの薬剤に抵抗性となり、病状が悪化して致命的な結末を迎える。

 Lancet誌に発表された新しい研究結果から、腫瘍を増殖させる複数のキナーゼ酵素を阻害する経口薬レゴラフェニブの投与により、グリベックとスーテントが無効となった患者のGISTをコントロールできる期間が、プラセボと比較して約4カ月延長したことが示された。この結果は、統計学的に非常に有意であった。

 「他の治療がすべて無効となり進行したGIST患者において、レゴラフェニブを最善の支持療法に加えて用いた場合、無増悪生存期間を指標とした病勢コントロールを有意に改善します。」と、本臨床試験の責任医師であるダナファーバーのGeorge Demetri医師は語る。
この難治性疾患の悪性度の高さを反映し、本試験において、最初にプラセボ服用群に割り付けられた患者の腫瘍は、平均1カ月未満で増大することが客観的に示された。この試験は、「クロスオーバー」法であったので、腫瘍が増大した患者にはレゴラフェニブを投与することが可能であった。実際、当初プラセボ群であった患者の85%がレゴラフェニブ投与を受け、その結果これらの患者の病勢もコントロールされた。

 Demetri氏は語る。「本試験はクロスオーバー法であるため、レゴラフェニブ投与を最初に受けた患者の生存期間延長を証明することを期待したものではありません。でなければ、プラセボ投与患者にはレゴラフェニブ投与を実施しないデザインとなっていたでしょう。」「しかし、(この試験の結果を見れば、レゴラフェニブ投与を受けた)患者の生存期間が延長することに、疑いの余地はありません。」と、氏は言う。

 「難治性GISTに対するレゴラフェニブ投与の承認申請は、FDA(米国食品医薬品局)によって迅速審査中です。」と、Demetri氏は語った。

 GISTは消化管に生じる稀なタイプの肉腫で、主に胃と小腸にみられる。毎年、米国では5000人以上、ヨーロッパでは約8000人がGISTに罹患すると推測されている。

 レゴラフェニブは、Bayer HealthCare Pharmaceuticals社が製造する、合理的に設計された新薬で、標準的化学療法に対して抵抗性となった転移性大腸癌の治療薬として、2012年9月にFDAに承認された。本薬剤は、キナーゼと呼ばれる腫瘍増殖活性を持つ複数の酵素を阻害し、キナーゼはGISTおよび他の癌の急速な増殖を促す。

 第3相国際臨床試験には、176カ国、57の病院から、治療抵抗性GIST患者199人が登録された。199人のうち133人は、レゴラフェニブ投与を3週間毎日受けたのち1週間休薬した。66人はプラセボ投与を受けた。試験開始後少なくとも1年間、患者の追跡調査を行った。

 他の標的療法と異なり、レゴラフェニブは腫瘍の縮小効果はあまり示さなかったが、病勢を進行させることなく平均4.8カ月間コントロールした。一方、プラセボ群の患者では、1カ月未満(0.9カ月)で増悪がみられた。高血圧、疲労、下痢および手足の発赤、むくみ、しびれ、皮膚剥離などの有害事象が、高率に認められた。これらの副作用は、レゴラフェニブの減量または休薬により対処可能であったと報告されている。

 Lancet誌の関連報告で、本剤は、転移大腸癌患者に対して「わずかに」効果があるとされている。イギリスのRoyal Marsden HospitalのDavid Cunningham医師は、論説でこう述べている。「比較的稀なGISTにおいては、現行治療が無効となった患者に対して、この薬を一般的に使用すべきであることは明らかです。」

 Demetri氏は付け加える。「レゴラフェニブが多数の変異タンパクおよびこの癌を引き起こす異常シグナルを阻害することは、周知の事実です。この悪性度の高い腫瘍に対する他の「標的治療」薬に抵抗性となったGISTを、この新しい薬がどのようにコントロールするのか、その分子メカニズムについて研究することが、次のステップとなるでしょう。」

 この臨床試験は、Bayer HealthCare PharmaceuticalsおよびDana-Farber/Harvard Cancer CenterのLudwig Centerから一部支援を受けた。

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徳井陽子 訳
東 光久(血液癌・腫瘍内科領域担当/天理よろづ相談所病院)監修 
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原文

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