高用量イホスファミドは再発・原発性難治性ユーイング肉腫に対する標準治療として有望
ASCOの見解
「再発・原発性難治性ユーイング肉腫患者に対し全生存期間を延長するイホスファミドの効果を示すデータは、診療を変える可能性があります。この試験以前は、治療法の選択に役立てるために、最も広く使用されているレジメンを直接比較した試験はありませんでした。rEECur試験の結果は、再発ユーイング肉腫に使用できる各レジメンに対する奏効、生存期間、毒性の見通しを、医師が患者やその家族に対し、客観的なランダム化試験のデータに基づいて話すのに役立ちます」とASCO肉腫専門家のVicki L. Keedy医師(理学修士)は語る。
高用量イホスファミド(販売名:Ifex)の使用は、再発・原発性難治性ユーイング肉腫の治療に用いられる他の3つの標準治療と比較して優れていることが、米国臨床腫瘍学会年次総会2022(ASCO22)にて発表の研究により明らかになった。
【試験要旨】
目的: 再発・原発性難治性ユーイング肉腫の治療において、4つの化学療法のうちどの治療法が優れているか比較検討する
対象者: 欧州の再発・原発性難治性ユーイング肉腫患者451人
結果:
・無イベント生存期間(EFS)中央値は、試験での一次治療終了後、がんの進行、続発性悪性腫瘍、および死亡が認められない期間と定義され、イホスファミド群では5.7カ月、トポテカン+シクロホスファミド群では3.7カ月であった。
・全生存期間(OS)中央値は、イホスファミド群では16.8カ月、トポテカン+シクロホスファミド群では10.4カ月であった。
意義: 本試験は、再発・原発性難治性ユーイング肉腫を対象に、異なる化学療法レジメンを比較した初のランダム化比較試験である。これまでの研究は単群試験または症例集積研究であった。本試験以前は、どのレジメンが最も有効であるか、あるいは最も毒性が強いかを述べることは不可能であった。
主な知見: rEECur試験は、再発・原発性難治性ユーイング肉腫に最も広く使用される4つの化学療法レジメンの毒性および生存期間のデータを比較した最初の試験であり、無イベント生存期間中央値は、高用量イホスファミド群で5.7カ月延長したことに対し、トポテカン+シクロホスファミド群では3.7カ月であったことが示された。OS中央値は、イホスファミド群で16.8カ月、トポテカン+シクロホスファミド群で10.4カ月であった。14歳未満の患者では、14歳以上よりも生存期間の差が大きかった。
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本試験の初期段階において、イリノテカン+テモゾロミド群とゲムシタビン+ドセタキセル群はイホスファミド群より結果が劣ることが判明し、これらの登録群は試験から除外された。脳や腎臓への毒性は、イホスファミド群ではトポテカン+シクロホスファミド群よりも強かった。発熱性好中球減少症(発熱、白血球の一種である好中球の減少)は、イホスファミド群とトポテカン+シクロホスファミド群の両群で発症は同程度で、それぞれ患者の26%と25%であった。QOLスコアは、小児ではイホスファミド群がトポテカン+シクロホスファミド群より優れていたが、成人ではそうではなかった。
「rEECur試験では、広く使用されている4種類の化学療法レジメンの無作為化データが初めて収集され、現在5種類目のレジメンのデータが収集されつつあります。rEECur試験以前は、再発・難治性ユーイング肉腫患者に対する薬剤選択の根拠が弱く、どの治療法が最も有効か、あるいは最も毒性が強いかを臨床医や患者が知るための無作為化試験がありませんでした」と、英国マンチェスター大学の小児・思春期腫瘍学臨床上級講師である主著者のMartin McCabe医師(医学博士)は述べる。
1987年に米国で初めて承認されたイホスファミドは、DNAにアルキル基を付加することで作用し、最終的にDNA鎖を切断してがん細胞の増殖能に影響を与える。
現在、再発・原発性難治性ユーイング肉腫の5年生存率は約15%である。ユーイング肉腫と診断される小児や10代の若者は米国では毎年約200人しかおらず、ユーイング肉腫はまれな疾患である。
【試験について】
第II/III相rEECur試験では、欧州において、4歳から50歳(中央値19歳)の再発・原発性難治性ユーイング肉腫患者を、トポテカン+シクロホスファミド群、イリノテカン+テモゾロミド群、ゲムシタビン+ドセタキセル群、または高用量イホスファミド群にランダムに割付けた。主要アウトカムは、第III相比較試験における無イベント生存期間であった。副次的アウトカムは、画像診断による奏効の検討、OS、毒性、QOLとした。1回目と2回目の中間評価で、イリノテカン+テモゾロミド群とゲムシタビン+ドセタキセル群の患者は、他の治療群よりも客観的奏効がみられず、かつ無イベント生存期間が短いため、両群の募集は中止された。最終的な評価は、トポテカン+シクロホスファミド併用とイホスファミドを比較しての第III相評価試験とした。追跡期間中央値は40カ月であった。
これらのレジメンが選ばれたのは、本試験が開始された当時、欧州で再発/難治性ユーイング肉腫に最も広く使用されていたレジメンであったからである。これらの選択が重要なのは、一部のレジメン、とりわけイリノテカン+テモゾロミド併用とトポテカン+シクロホスファミド併用が、分子標的薬での試験にて化学療法のバックボーンとして使用されていたためである。
【次のステップ】
本試験では、イホスファミド群の患者を引き続き募集している。また、カルボプラチンおよびDNAを損傷しうる薬剤であるエトポシドを含む5種類目の化学療法群を追加した。研究者らは本年後半に分子標的治療法に関する新しい群の導入を計画している。
rEECur試験は以下から助成を受けた。
Cancer Research UK and European Commission with additional funding from the Aamu Pediatric Cancer Foundation、 Australia and New Zealand Children’s Hematology and Oncology Group、 Australia and New Zealand Sarcoma Association、 Canteen、 German Cancer Aid、 Swiss Pediatric Oncology Group and the Zoé4life 4life Other Foundation
日本語記事監修 :遠藤 誠(肉腫、骨軟部腫瘍/九州大学病院)
翻訳担当者 (ポストエディット)松谷香織
原文掲載日
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