骨肉腫に免疫療法薬が奏効しない理由をプロファイリングで解明
免疫療法薬により希少がん種の転帰を改善する戦略を提示
テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの新しい研究では、骨肉腫患者から採取した腫瘍サンプルの包括的なプロファイリングにより、免疫チェックポイント阻害剤治療で観察される従来の応答不良には複数の因子が寄与していることが明らかになっている。
Nature Communications誌で発表された本研究により、腫瘍への免疫細胞浸潤の不足、利用可能なT細胞の活性低下、免疫刺激性の新抗原の欠如、および複数の免疫抑制経路のすべてが組み合わさることで、免疫療法に対する応答が抑制されることがわかった。
「本研究は、希少がんに焦点を当てているだけでなく、そのがんで免疫療法薬に応答するであろうことを示唆する一定の特徴が認められているにもかかわらず応答しない多面的な理由を理解するための土台になるという点で重要です」と、責任著者でゲノム医療部門長のAndy Futreal博士は述べた。「これらの原因を理解し、分解していくと、腫瘍の免疫系破壊を回避する方法についての見通しを得ることができるようになります」。
米国がん学会によると、骨肉腫は骨から発生する最も一般的な固形がんであるが、米国では診断されている症例が毎年わずか900件である。骨肉腫は、10代の若者に最もよくみられる。初期に診断された場合、化学療法と外科手術の併用による治療で約70%の生存率を達成するが、転移性骨肉腫については30%未満の生存率である。
これらのがんは、多くのゲノムの変化および突然変異を特徴とし、免疫療法薬が有効である可能性が高い場合が多いと、Futreal博士は説明している。しかし、これまでの骨肉腫の臨床試験では免疫チェックポイント阻害剤が有効であることが証明されていない。
本研究では、骨肉腫の腫瘍サンプルの免疫プロファイルを特徴づけようとした。このような研究は、多数の患者を治療するMDアンダーソンのような施設でのみ可能な研究である。
原発性、再発性、転移性骨肉腫の小児および成人患者から採取した48個の腫瘍サンプルに対し、全ゲノム、RNAおよびT細胞受容体のシーケンシング解析、免疫組織化学法、逆相タンパク質アレイプロファイリングを実施した。サンプルの大部分が、再発がん(23%)および転移がん(51%)由来であった。
これらのサンプルのゲノム変化は、これまでこの分野で報告されたものと類似しており、サンプルのがん種間ではほとんど差異がなかった。他のがん種とは対照的に、これらの骨肉腫のゲノム変化は、骨肉腫に対する免疫応答を刺激すると考えられている変異タンパク質または新抗原の発現の増加を伴わなかった。
また、骨肉腫では、免疫チェックポイント阻害剤が有効な肺がんや黒色腫などの他のがん種よりも免疫細胞浸潤度が低い場合が多いことが明らかになった。さらに、腫瘍内のT細胞は、クローン性スコアが低く、低い活性を示していた。
調査対象サンプルの遺伝子発現分析により、3つの異なるクラスが存在することが明らかになり、これらは免疫浸潤度に対応していた。「炎症性」腫瘍は、免疫浸潤度が最も高かったが、免疫活性を抑制する多くのシグナル伝達経路でも高い活性を示した。
逆に、「非炎症性」腫瘍は、免疫浸潤度が最も低く、免疫細胞と通信するための重要な分子であるヒト白血球抗原(HLA)の発現が減少しており、コピー数欠失が認められる遺伝子の数が多く、高いゲノム不安定性を示した。
興味深いことに、利用可能なPARP阻害剤の標的となりうるPARP2遺伝子の発現増加は非炎症性」骨肉腫の低い免疫浸潤度と関連しており、PARP阻害剤とチェックポイント遮断薬の組み合わせを探索する研究の理論的根拠を支えていると、共著者でサルコーマ腫瘍内科部門および小児科部門の助教授であるAndrew Livingston医師は説明した。
「腫瘍のゲノミクスと免疫応答の相互作用を理解することにより、免疫療法薬で利益を得る可能性が高い骨肉腫患者を特定する準備が整います」と、Livingston医師は述べた。「これらの発見は、免疫療法薬と、標的療法または細胞ベースの療法を組み合わせた新しい臨床試験の土台となり、患者の転帰を改善します」。
本研究は、以下による助成を受けた:Triumph Over Kid Cancer Foundation、A Shelter for Cancer Families、WWWW(QuadW)Foundation、The Cancer Prevention & Research Institute of Texas(R120501、RP170067), and The Robert A. Welch Distinguished University Chair of Chemistry.
Futreal博士に加えて、共同著者は、以下の通りである:
Chia-Chin Wu, Hannah Beird, Ph.D., Akash Mitra, Youyun Zheng, and Jason Roszik, Ph.D., all from Genomic Medicine; J. Andrew Livingston, M.D., of Sarcoma Medical Oncology and Pediatrics; Shailesh Advani, Ph.D., Richard Gorlick, M.D., and Najat Daw, M.D., all of Pediatrics; Shaolong Cao, Ph.D., Zhenlin Ju, Ph.D., and Wenyi Wang, Ph.D., all of Bioinformatics and Computational Biology; Alexandre Reuben, Ph.D., of Thoracic/Head & Neck Medical Oncology; Davis Ingram, Wei-Lien Wang, M.D., and Alexander Lazar, M.D., Ph.D., all of Pathology; Cheuk Hong Leung and Heather Lin, Ph.D., both of Biostatistics; Shreyaskumar Patel, M.D., Robert Benjamin, M.D., Neeta Somaiah, M.D., Anthony Conley, M.D., and Patrick Hwu, M.D., all of Sarcoma Medical Oncology; Gordon Mills, M.D., Ph.D., of Systems Biology; and Valerae Lewis, M.D., of Orthopedic Oncology.
著者らは利益相反を宣言していない。
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