オララツマブ、軟部肉腫で生存の延長示されず、新規投与を中止
EUで現在治療中の患者は1,000人程と推計
欧州医薬品庁(EMA)は2019年1月23日にプレスリリース発表によると、オララツマブ[olaratumab](商品名:Lartruvo)+ドキソルビシン併用は、軟部肉腫患者の寿命を延長するのに、ドキソルビシン単剤より有効でないことを示したANNOUNCE試験の予備的結果を発表した。この試験の最終結果ではないが、EMAは新規患者に対してこの薬剤を用いた治療を開始すべきではないと勧告している。
オララツマブによる治療を現在受けている患者に対して、有用性があると思われる場合には、主治医はこの薬剤による治療の継続を検討しても差し支えない。EUでオララツマブによる治療を現在受けている患者は、1,000人程と推計される。
これまでに得られた情報からは、この薬剤に新たな安全性の懸念は認められず、併用で報告された副作用はドキソルビシン単剤のものと同様であった。
オララツマブは2016年11月に、適切な薬剤が不足している状況の中で、進行軟部肉腫治療薬として承認された。承認時は、その裏付けとなった主要試験の患者数が少なかったため、オララツマブの効果に関するデータは限定的であった。このことから、薬剤の有効性と安全性を確認するために、申請企業がANNOUNCE試験で得られた追加データを提供するという条件付きで販売承認された。
医療従事者には、試験の予備的結果および現在の治療における推奨事項が書面で通知される。EMAは必要に応じてさらに情報を伝達する。
医療従事者向け情報
- 第3相ANNOUNCE試験では、進行あるいは転移性軟部肉腫患者を対象に、ドキソルビシンとの併用でオララツマブの評価が行われ、ドキソルビシン単剤との比較で、オララツマブ+ドキソルビシン併用には臨床的有用性が認められなかった。
- この試験では、主要評価項目である生存期間の延長が全集団(HR:1.05、オララツマブ+ドキソルビシン併用とドキソルビシン単独の比較では、それぞれの中央値は20.4カ月対19.7カ月)および平滑筋肉腫部分集団(HR:0.95、オララツマブ+ドキソルビシンの中央値21.6カ月に対し、ドキソルビシンの中央値21.9カ月)いずれにおいても達成されなかった。
- 加えて、この試験の副次的評価項目の一つである全集団における無増悪生存期間の延長においても有用性は示されなかった。(HR:1.23、オララツマブ+ドキソルビシンの中央値5.4カ月に対しドキソルビシンの中央値6.8カ月)
- 結果として、新たな患者にオララツマブを処方するべきではない。
- 試験結果の評価がさらに継続している間は、臨床的有用性が認められる患者に対してオララツマブ治療の継続を検討しても差し支えない。
- この試験において新たな安全性上の懸念は認められず、2つの治療群における安全性プロファイルは同等であった。
- この薬剤を処方したと思われるすべての医療従事者に、試験の予備的結果および現在の治療における推奨項目を通知する文書が送付される。
患者向け情報
- 新しい試験の結果から、ドキソルビシン単剤と比べて、Lartruvo(オララツマブ)+ドキソルビシンの併用は患者の寿命を延長するのに有効ではないことが示された。
- この薬剤による治療を新たな患者に開始するべきではない。
- Lartruvoの治療を受けている場合は、治療を続けるべきかどうかについて主治医と話し合うべきである。
- 新しい安全性上の懸念は認められなかった。
薬剤について
オララツマブは、進行軟部肉腫の成人患者を治療するために認可されたがん治療薬である。この進行軟部肉腫は、筋肉、血管および脂肪組織などの軟部支持組織を冒す腫瘍の一つである。
オララツマブは、手術あるいは放射線療法を受けることができず、さらにドキソルビシンによる治療歴のない患者に対してドキソルビシンと共に用いる。
オララツマブは、2016年11月9日に条件付き承認された。この薬剤に関するより詳しい情報はEMAウェブサイトで確認できる。
条件付き承認について
条件付き製造販売承認は、EUにおける医薬品への迅速なアクセス経路の一つである。この制度によって、通常必要とされるより少ない臨床データを基に、医薬品を早期承認することができる。この適応となるのは、重篤な消耗性疾患、生命を脅かす疾患または希少疾患を対象とした医薬品、さらに公衆衛生上の脅威に応じた緊急事態での使用を意図した医薬品である。
得られたデータが包括的ではない可能性がある間は、医薬品のベネフィットがリスクを上回ることを証明し続けなければならず、申請者は承認後に包括的な臨床データを適時提供する立場にある。これらの医薬品には、薬剤に関するすべてのデータを取得することを目的とした承認後の具体的な義務が課せられる。
条件付き製造販売承認の有効期間は1年間である。EMAは年1回入手した薬剤データを審査し、ベネフィットとリスクのバランスを再評価する。その後、当局は具体的な義務または期間を維持あるいは変更する必要があるかどうか、販売承認を継続、変更、一時停止または取り消すべきかどうかについての意見を公表する。
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