軟部肉腫に術前ニボ/ニボ+イピ療法で長期生存が期待
MDアンダーソンがんセンター
軟部肉腫患者にとって術前免疫療法は安全で有効な選択肢となる可能性が、MDアンダーソン主導の第2相試験で示された
術前(ネオアジュバント)免疫療法を受けた軟部肉腫患者は、手術時に残存腫瘍がほとんどなく、長期生存が期待できることが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターによる第2相試験から明らかになった。本試験結果は、2月13日Nature Cancer誌に掲載された。
免疫療法と放射線療法を併用した後に残存腫瘍を外科的に切除すると、未分化多形肉腫(UPS)患者の90%で、増殖しうる残存腫瘍細胞が15%以下となり、これまでの放射線療法単独よりも良好な結果が得られた。初回治療から2年後の全生存率(OS)は、切除可能な後腹膜脱分化型脂肪肉腫(DDLPS)で82%、UPSで90%であった。
「今回の結果は、軟部肉腫に対して免疫療法が果たしうる役割と、術前治療のプラットフォームが、患者さんの新たな治療選択肢の同定に役立つことを示しています」と共同研究者である外科腫瘍学准教授のChristina Roland医師は述べた。「肉腫患者の全身治療の選択肢は限られていますが、この試験データは免疫療法が利用可能であることを裏付けています」。
毎年、米国では約13,000例の軟部肉腫が新たに診断されている。軟部肉腫の中で多いのは、DDLPSとUPSの2つのタイプである。現在、切除可能な軟部肉腫の多くの患者にとって、手術は治癒の可能性がある唯一の治療法であるが、多くの患者で5年以内に再発する。
Roland氏によると、軟部肉腫患者に対する、根治を目的とした手術の前に行う免疫療法について検討された研究は、今回が初めてであった。再発リスクを減らすための現在の治療選択肢は、手術前の放射線療法と化学療法である。
本試験では、成人DDLPS患者17人と、成人UPS患者10人を対象に、ニボルマブ(販売名:オプジーボ)単独またはニボルマブとイピリムマブ(販売名:ヤーボイ)の併用による術前療法を評価した。免疫療法終了後、全員が腫瘍の外科的切除を受けた。サンプルを採取し、患者にとって臨床的に意味のある奏効基準の特定と定義を行い、これを試験の主要評価項目とした。これらのサンプルは、転帰に影響し得る腫瘍因子の検討にも使用された。研究者らは、腫瘍内のB細胞の存在が生存率改善と関連していることを発見した。
「B細胞を評価、検査するために、さまざまな段階で試験参加者の生検を行いました」と、共同研究者で肉腫腫瘍内科准教授のNeeta Somaiah医師は述べた。「これまでの研究で、免疫療法の反応予測には腫瘍内のB細胞の存在が重要であることはわかっていました。今回の研究では、腫瘍内のB細胞が高レベルで発現している患者ほど、奏効する可能性が高いことがわかりました」。
参加者に、手術合併症のリスク増加は認められず、新たな副作用も確認されなかった。観察された副作用は予想されたものであり、対処可能なものであった。よくみられた副作用は発疹、疲労、下痢であった。
この試験の過去の初期データは、2022年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された。本試験は、ブリストル・マイヤーズスクイブ社の資金提供を受けた。共著者の全リストと開示情報は論文に記載されている。
- 監訳 遠藤誠(肉腫、骨軟部腫瘍/九州大学病院)
- 翻訳担当者 平沢沙枝
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- 原文掲載日 2023/02/13
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