FDAがRET遺伝子変異を有する甲状腺髄様がんにプラルセチニブを承認

2020年12月1日、米国食品医薬品局(FDA)は、全身治療を必要とする進行もしくは転移RET変異甲状腺髄様がん(MTC)、または、全身治療を必要とするRET融合遺伝子陽性甲状腺がんで、放射性ヨウ素抵抗性(放射性ヨウ素治療が適切な場合)の成人患者および12歳以上の小児患者を対象に、プラルセチニブ(販売名:GAVRETO、Blueprint Medicines Corporation社)を承認した。

有効性は、多施設非盲検多コホート臨床試験(ARROW、NCT03037385)において、腫瘍にRET遺伝子変異が認められる患者を対象に検討された。RET遺伝子変異の同定は、試験実施地域の施設において、次世代シーケンシング、蛍光in situハイブリダイゼーション、またはその他の検査のいずれかを用いて、前方視的に判定された。

主要有効性評価項目はRECIST 1.1を用いて、盲検化された独立審査委員会により決定された奏効率(ORR)および奏効期間であった。進行または転移RET遺伝子変異甲状腺髄様がん(MTC)に対する有効性は、カボザンチニブまたはバンデタニブの治療歴がある患者55人で評価された。これらの患者のORRは60%(95%信頼区間[CI]:46%~73%)であり、奏効患者の79%で奏効が6カ月以上持続した。有効性は、カボザンチニブまたはバンデタニブの治療歴がないRET遺伝子変異MTC患者29人でも評価された。ORRは66%(95%CI:46%~82%)であり、患者の84%で奏効が6カ月以上持続した。RET融合遺伝子陽性甲状腺がん患者に対する有効性が、放射性ヨウ素抵抗性患者9人で評価された。ORRは89%(95%CI:52%、~100%)であり、奏効患者全員で奏効が6カ月以上持続した。

最もよくみられた副作用(25%以上)は、便秘、高血圧、疲労、筋骨格痛、および下痢であった。最もよくみられたグレード3~4の異常検査所見(2%以上)は、リンパ球減少症、好中球減少症、ヘモグロビン減少症、低リン酸血症、低カルシウム血症(補正値)、低ナトリウム血症、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)増加、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)増加、血小板減少症、およびアルカリホスファターゼ増加であった。

成人および12歳以上の小児におけるプラルセチニブの推奨用量は、1日1回、空腹時における400mgの経口投与でである。プラルセチニブ服用の少なくとも2時間前と1時間後には食物を摂取してはならない。

GAVRETOの全処方情報はこちらを参照。

本審査には、Real-Time Oncology Review(RTOR)パイロット・プログラムおよびFDAによる評価を円滑に進めるために申請者が自発的に申請を行うAssessment Aidが使用された。FDAは本申請をFDAの目標期日の3カ月前に承認した。

本申請は、奏効率および奏効期間に基づいて迅速承認された。本適応の継続的な承認には、検証的試験での臨床的有用性の検証と説明が条件となる可能性がある。

本申請は、優先審査、画期的治療薬およびオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)に指定された。FDA迅速承認プログラムに関する情報は、「企業向けガイダンス:重篤疾患のための迅速承認プログラム-医薬品およびバイオ医薬品」(Guidance for Industry: Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics)に記載されている。

翻訳担当者 渡邊 岳

監修 山崎知子(頭頸部・甲状腺・歯科/宮城県立がんセンター 頭頸部内科)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

甲状腺がんに関連する記事

甲状腺未分化がんに分子標的薬と免疫療法薬アテゾリズマブの併用は全生存期間を改善の画像

甲状腺未分化がんに分子標的薬と免疫療法薬アテゾリズマブの併用は全生存期間を改善

甲状腺未分化がんにおいて、これまで発表された最も長い全生存期間中央値を達成したアプローチ

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、抗PD-L1免疫療法と変異指向性標的薬の併...
甲状腺結節が見つかることは多い:首元の検査後にすべきことの画像

甲状腺結節が見つかることは多い:首元の検査後にすべきこと

甲状腺結節は珍しくはなく、甲状腺の不規則な増殖(過形成)であり、悪性ではないことが多い。、しかし、時々頸部をチェックして、なにか心配なことがあれば医療チームに伝えるべきとされる。アラバマ大学バーミンガム校(UAB)のオニール総合がんセンター
プラルセチニブはRET遺伝子融合に対し、腫瘍部位によらない組織横断的な有用性を達成の画像

プラルセチニブはRET遺伝子融合に対し、腫瘍部位によらない組織横断的な有用性を達成

あらゆるがん種で有効な選択肢となる分子標的療法の可能性が、第1/2相試験で示唆される 高選択性RET阻害薬プラルセチニブ(販売名:GAVRETO、Blueprint Medicines Corporation社)は、腫瘍部位にかかわらず、R
米国女性に甲状腺がん診断数がなぜ急増しているかの画像

米国女性に甲状腺がん診断数がなぜ急増しているか

甲状腺がんの診断は、男性と比較して女性に多く、過去数十年の間にこの性差は大幅に拡大している。 しかし新たな研究により、この性差は表面的にみえているものとは異なることが判明した。8月30日、JAMA Internal Medicine誌に掲載