分子標的薬スニチニブは進行性甲状腺がん治療に有望

キャンサーコンサルタンツ

分子標的薬スニチニブ(スーテント)は進行性分化型甲状腺がん患者の治療に有効であると思われる。米国内分泌学会はプレスリリースで第2相臨床試験の成績を報告した。本試験成績は、2015年3月5~8日にサンディエゴで開催された第97回米国内分泌学会年次総会(Endocrine Society’s 97th annual meeting)においても発表された。

分化型甲状腺がんは甲状腺がんで最もよくみられる組織型であり、甲状腺切除術および放射性ヨウ素(RAI)治療といった標準療法による治癒率が高いとされている。しかしながら、分化型甲状腺がんはRAI治療に対して抵抗性を示すこともある。RAI抵抗性甲状腺がんでは有効な治療選択肢が乏しいとされる。

スニチニブは分子標的薬であり、多くのがん種治療に対して承認されている。がん細胞内の複数のタンパク質(プロテインキナーゼ)を阻害し、がん細胞の増殖および分裂を阻害する。

第2相臨床試験で得られた成績によれば、スニチニブは進行性甲状腺がん患者に対するRAI治療への追加療法として期待される。本試験はRAI治療を少なくとも1回受けた治療歴のある23人の患者を対象とした。

患者の無増悪生存期間中央値は約8カ月間であった。これらの成績を、最近実施されたプラセボ(有効成分を含まない)投与による別の臨床試験の成績と比較した。その結果、プラセボを服用した患者はスニチニブを服用した患者と比較して、無増悪生存期間がかなり短かった。さらに、スニチニブの無増悪生存期間は、分化型甲状腺がん治療用に承認されているソラフェニブ(ネクサバール)と同程度であった。

スニチニブを服用した患者のうち、83%で治療に対する効果が認められた。効果の内訳として、腫瘍の縮小(部分奏効)が患者の26%で、また進行の抑制(疾患の安定)が57%でみられた。

スニチニブは全体的に良好な忍容性を示した。副作用は軽度から中等度であった。

研究者は、スニチニブは進行性甲状腺がんを治癒させるものではないが、疾患の進行を遅らせる可能性があると結論づけた。さらに、これらの知見は、進行性甲状腺がんを対象としたスニチニブの第3相臨床試験でさらに研究を進めることの十分な根拠となる。

参考文献:
Advanced Thyroid Cancer Responds to Targeted Therapy with Sunitinib [press release]. Endocrine Society website. Available at: https://www.endocrine.org/news-room/current-press-releases/advanced-thyroid-cancer-responds-to-targeted-therapy-with-sunitinib. Accessed May 11, 2015


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翻訳担当者 石川寛和

監修 辻村信一 (獣医学/農学博士、メディカルライター)

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