FDAが甲状腺癌の治療薬としてソラフェニブを承認/FDAニュース

FOR IMMEDIATE RELEASE: 2013年11月22日
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FDAが甲状腺癌の治療薬としてソラフェニブを承認

米国食品医薬品局(FDA)は、2013年11月22日、進行期(転移性)分化型甲状腺癌の治療薬として、ソラフェニブ(ネクサバール)の適応拡大を承認した。

甲状腺癌は、首にある甲状腺が癌性増殖したものである。分化型甲状腺癌は甲状腺癌の中で最も一般的な癌種である。米国国立癌研究所(NCI)の推定によると、2013年、60,220人の米国人が甲状腺癌と診断され、1,850人が甲状腺癌で死亡するという。

ソラフェニブは、癌細胞の複数のタンパク質 を阻害し、癌細胞の増殖と分裂を抑制することにより作用する。ソラフェニブの新たな適応対象は、放射性ヨード療法に反応しなくなった局所再発性または転移性進行分化型甲状腺癌患者である。

「分化型甲状腺癌は、特に従来治療法に反応しない場合、治療が困難になる可能性があります」とFDA医薬品評価研究センターの血液腫瘍製品室長Richard Pazdur医師は言う。「今回の承認は、治療が難しい疾患をもつ患者に有用な治療選択肢の拡大にFDAが取り組んでいることを示すものです」。

ソラフェニブの安全性および有効性は、放射性ヨード療法に反応しない局所再発性または転移性進行分化型甲状腺癌患者417人が参加した臨床試験で確定された。ソラフェニブによって、患者が癌の進行なく生存した期間(無増悪生存期間)が41%延長した。ソラフェニブの投与を受けた患者の半数は、癌が進行することなく10.8カ月以上生存したのに対して、プラセボの投与を受けた患者では5.8カ月以上であった。

ソラフェニブ治療を受けた患者に最も多くみられた副作用は下痢、疲労 、感染症、毛髪 脱落(脱毛症)、手足皮膚反応、発疹、体重減少、食欲減退、悪心、消化器痛および腹痛、高血圧であった。甲状腺癌促進因子の一つと考えられる甲状腺刺激ホルモンは、ソラフェニブによる治療期間中、数値が上昇しやすいため、甲状腺ホルモン補充療法の調整が必要となる。

FDAは、ソラフェニブの新たな適応についてFDA優先審査プログラムによる審査を完了した。このプログラムは、重篤な状態 の治療、予防、診断の安全性または有効性に有意な改善をもたらす薬剤を優先的に6カ月で審査するものである。さらに、ソラフェニブは希少な疾患や状態の治療を目的とする薬剤であることからオーファンドラッグに指定された。

FDAは2005年、進行性腎癌の治療薬としてソラフェニブを承認した。2007年には、摘出不可能な肝癌の治療薬としても適応を拡大している。

ソラフェニブは、Bayer HealthCare Pharmaceuticals Inc.社(ニュージャージー州ウェイン)とOnyx Pharmaceuticals社(カリフォルニア州サウス・サンフランシスコ)が共同販売している。

詳しい情報については以下を参照のこと:

FDA: Office of Hematology and Oncology Products (血液腫瘍製品室)[原文]
FDA: Approved Drugs: Questions and Answers(承認薬:質問と回答)[原文]
NCI: Thyroid Cancer  (甲状腺癌)[原文]

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山田登志子 訳
金田澄子(薬学)監修 
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原文

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