転移甲状腺癌の治療におけるネクサバールの有意な効果が認められる

キャンサーコンサルタンツ
2009年4月

オハイオ州立大学の研究者たちは、ネクサバール(ソラフェニブ)が転移甲状腺乳頭癌の患者たちに有意な抗腫瘍効果をもたらすことを明らかにした。この研究についての詳細は、2009年4月1日発行の、Journal of Clinical Oncology 誌にて掲載された。[1]

甲状腺癌は通常外科手術とヨード131によって治療される。これらを用いた治療によって回復しない患者たちに放射線療法や化学療法を施しても、さほど良い効用は期待出来ない。そのため、従来の治療法で効果のない患者たちに対する新しい治療法が求められている。最近の研究によって、血管内皮増殖因子受容体1、2、3を阻害する活性を持つチロシンキナーゼ阻害剤axitinib[アクシチニブ]が不応甲状腺癌に対する作用を持つことが明らかになっている。

ネクサバールは、進行腎細胞癌や手術不能肝細胞癌の治療薬として承認されている経口マルチキナーゼ阻害剤である。ペンシルベニア大学において以前行われた研究結果、進行甲状腺癌患者30人をネクサバール治療したところ、部分奏効が23%、安定が53%であったと報告された。さらに、19人のうち17人の評価可能な患者における血清サイグロブリンのわずかな減少が報告されている。無増悪期間中央値は79週であった。

今回の調査では、41人の甲状腺乳頭癌患者を含む、56人の患者が試験に組み入れられた。すべての患者は放射線ヨード療法をすでに受けており、甲状腺乳頭癌患者のうちの80%は化学療法を受けていなかった。

乳頭癌以外の甲状腺癌においては、このネクサバールを使用した治療に対する反応は見られなかった。

甲状腺乳頭癌患者における部分奏効は15%、安定は56%であった。部分奏効期間の中央値は7.5カ月、無増悪生存期間中央値は15カ月であった。血清サイグロブリン値の上昇が見られた18人のうち14人の患者が、治療による25%以上の減少を経験した。同研究者たちは、「ソラフェニブは、生物学的に見ても、臨床の現場においても、転移甲状腺乳頭癌に対して抗腫瘍作用をもたらす、十分に忍容性のある治療法である」とまとめている。

コメント:上記の2つの研究は、ネクサバールが進行甲状腺癌の治療に有効な薬剤であることを立証した。これらの研究において見られた奏効は、化学療法による治療時に見られるものよりも良好で、毒性も少ない。

参考文献:[1] Kloos RT, Ringel MD, Knopp MV, et al. Phase II trial of sorenib in metastatic thyroid cancer. Journal of Clinical Oncology. 2009;27:1675-1684.


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翻訳担当者 竹村 知紗

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

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