これまででもっとも大きな悪性中皮腫の臨床試験で新薬が生存期間の延長効果を示す
米国国立がん研究所(NCI)臨床試験結果
Largest-Yet Mesothelioma Study Shows Survival Benefit with New Drug
(Posted: 05/20/2002, Reviewed: 03/15/2006) これまででもっとも大きな悪性胸膜中皮種(肺の内膜にできる悪性度の高い癌)の第3相臨床試験で、新しい化学療法剤レジメンを受けた患者は旧薬剤を受けた患者より痛みが少なく、長く生存したと示されたことが報告された。2002年5月20日フロリダ、オーランドで開催された米臨床腫瘍学会年次総会での発表。
キーワード 化学療法、肺癌、中皮腫、ペメトレキセド アリムタ
肺の内膜(胸膜)を冒す侵襲性の強い癌である悪性胸膜中皮腫に関するこれまでで最も大きい第3相臨床試験の担当医師らは、新しい化学療法剤によるレジメンを受けた患者は、既存薬の投与を受けた患者より長く生存し、痛みが少ないという結果が得られたと報告した。
結果は2002年5月20日にフロリダ州オーランドで開催された米国臨床腫瘍学会の年次総会で発表された。(注意: 最終データは、その後2003年6月15日発行のJournal of Clinical Oncology誌で発表された。ジャーナル要旨参照)
ペメトレキセド(商品名アリムタ)は新しい抗葉酸剤(葉酸の代謝経路を標的とする薬)で一部のビタミンB群の利用度に影響する。試験の結果、一般的に使用されている化学療法剤シスプラチンとの併用でペメトレキセド投与を受けた患者の41%で腫瘍の縮小がみられた。シスプラチン単独投与群では17%のみに腫瘍の縮小がみられた。さらに併用治療を受けた患者は,シスプラチン単独治療を受けた患者より3カ月近く長く生存した。
代表著者であるシカゴ大学癌研究センターのNicholas J. Vogelzang医師によると「これはこの疾患で行われた最も大きな臨床試験であり、併用治療を受けた患者の生存率が25-30%改善したという報告は、これまで悪性胸膜中皮腫の治療で初めての有意な改善を示したものである。
全症例の70~80%の悪性胸膜中皮腫はアスベストの曝露の既往歴と関連があり、承認されている化学療法も非常に有効な化学療法も全く存在しない。研究者らは,ペメトレキセドが急速な腫瘍増殖に関連するような鍵となる酵素(体内の化学反応の速度を上げる分子)を標的とするため、ペメトレキセドがこの疾患の治療にも有効性を示すと仮定した。
患者11例にペメトレキセドとシスプラチンを投与した初期の第1相臨床試験は有望で、最終的な第3相試臨床試験が行われた。悪性中皮腫に対する確立された治療はないため、他の癌の治療において有効な標準的化学療法剤であるシスプラチンが対照群に使用された。その第3相臨床試験は当初、1999年4月から2001年3月に456例を登録する計画であった。しかし150例の患者を登録した後、ペメトレキセドとシスプラチンの併用群で高い毒性の発現率と死亡率が認められた。蛋白質が分解することで血中に検出される化学的な副産物であるホモシステイン値が上昇が認められ、このことが危険な副作用を減らした臨床試験の再デザインの基礎になった。
修正プロトコルに280例が登録された。これまでに成功している薬の副作用を減らす方法を利用し、ペメトレキセドが葉酸代謝拮抗薬として重要なビタミンの値を低下させるため、新しいプロトコルに葉酸を追加した。葉酸は試験の前と試験中に投与され、ビタミンB12は試験中のみに投与された。
両ビタミン は葉酸値を上昇させ,ホモシステイン産生を抑制し、ペメトレキセドに対する毒性を低下させる。「私たちにはすでに、開始当初のレジメンより毒性が有意に低いレジメンがある。」とVogelzang医師は述べた。
本試験に対するビタミンの重要性を考慮に入れ、併用療法と単独療法を比較するだけでなく、ビタミン剤を最初に服用した患者と服用しなかった患者を比較する試験を実施した。
悪性中皮腫の標準的治療は手術である。外科治療で治癒することは稀で、長期生存もほとんどない。手術後の放射線治療または化学療法の実施で生存期間が延長したことはないが、放射線治療が中皮腫に関連する疼痛を軽減させる可能性がある。
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吉村祐実 訳
瀬戸山修(薬学)監修
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